論客・古市憲寿氏のデビュー作。『希望難民ご一行様 ピースボートと「承認の共同体」幻想』 怒る老人、泣く若者――船内の模様尾を調査、分析して話題になった一冊だが、あれから7年。若者でもない、老人でもない。人生に絶望した無職中年がピースボートに乗船してみた。そこで見たものとは!?

「希望は戦争」という名文がある。知らない人は検索してみてほしいが、まさにそんな気分だった。いっそ日本が戦争に巻き込まれこの絶望的な状況をスクラップ&スクラップしてはくれまいか・・・

 私の名前は「絶望中年」とでもしておこう。
 今年の6月。自己都合退職の欄に丸をつけたが、実質会社をクビになった。具体的な仕事内容は差し控えるが、うつ状態で2年くらいの療養生活から復帰し、40代にしてそれなりに名誉ある仕事に、希望をもって転職したのが今年の1月。激務ではあったが、成し遂げたい思いはあった。しかし上司からのパワハラ等がストレスになり、軽度のうつ状態が再発。

 医者からは抗うつ剤と職場環境の改善(配置換え等)で継続は可能だと診断が出ていたが、会社側から環境改善はできないと言われ、自己都合で退職となった。

 勤務期間が6か月に満たず、雇用保険の支給対象にもならず(本当クソ制度。とっととベーシックインカムに移行しろよ)また休職する間もなく退職してしまったので、傷病手当金の支給もなく、毎月の職安詣でや、健康保険組合通いもない、つまり日本にいる必要がない。

 じゃあ、いっそのことピースボートにでも乗ってみるか!
 と、ついカッとなって申し込んでみたのだ。でも自殺したり無差別殺人を起こしたりするよりマシであろう。それにしてもこの絶望的な状況が平和の礎に立脚しているのであれば、本当に平和というのはクソである、と思う気持ちも分らんでもない。

 つまり今回の旅は、自分の中に存在する「戦争によるカタストロフィへの切望」VS「平和の尊さの希求」を競わせる旅でもある。

 旅の資金源は、アベノミクスのおかげでたまたま保有していた株が値上がりして充てられたものだった。アベノミクスで儲けたカネを(文字通り右から左へ)ピースボートにつぎ込むんだから痛快である。

 2017年8月13日、友人のバグパイプ演奏に見送られて横浜港を出港。何でそんな友人に恵まれているかってのも不思議でしようがないのだが、感激で鳥肌が立つ。

 同室となった30歳の男性も仕事をちょうど辞めて来たところだったという。

 船内見学会の時に案内してもらった50代の女性もちょうど仕事を辞めたタイミングでピースボートに乗ったという。

 夕食で隣り合わせた20代の女性はわざわざピースボートに乗りたくて仕事を辞めたという。休職ではない、退職なのだ。この国は優秀な人材であってもちょっとだけ長期旅行をするために会社を退職しなければならない。その隣の女性も仕事を辞めたタイミングだったとのこと。

 船内で「アラフォー集まれ!」というイベントがあったが、10人くらいが集まった。もっといるかもしれないが、約1000人の乗客がいるので、1~2%がアラフォーというところだ。その中でこのピースボートに乗るために会社を辞めて来た人、乗るちょっと前に退職した人は7人、独身の人が9人という結果だった。それ以外は80%がシニア、 18~19%が若者というところだろう。

 何がアベノミクスの効果で求人の数が増えているんだか。
 ピースボートは小銭の貯まった無職の中年で溢れかえっているじゃないか!
しかし、多くは無いが自分と同じ境遇の人たちがいるのはホッとする。船内居酒屋「波へい」で遅くまで前職のことやこれからのこと、同世代あるあるを語り合った。

 我々は政府によって分断されることなく、こうして同じ境遇の者同士語り合って、ゆるやかにでも団結して生きていくことが大切だと考えさせられた。