“良いもの”の定義とは何だろうか。長く使えること、高価であること、
使い勝手が良いこと…きっと人の数だけ正解が存在する永遠の難問。
その人の生き方が見えるもの、それもまた、ひとつの定義だ。
“良いもの”と暮らす方々に、「私の好きなもの」を訪ねて。

注:文中の内容は2016年秋取材時のものです。

 

【My Favorite Things #001】
変わることを、楽しむもの。
内田 斉さん 〈JANTIQUES〉オーナー

[PROFILE] 1969年生まれ、群馬県出身。原宿の古着店<サンタモニカ>に18年勤務後、独立。2005年、中目黒にヴィンテージショップ〈JANTIQUES(ジャンティーク)〉をオープン。オーナー兼バイヤーとしても活躍。

 壁一面に貼った世界地図に年代物の家具、綺麗に整頓されたヴィンテージの数々…普段事務所として使用する一室は、まるで男のロマンチズムを凝縮したアトリエのよう。
「この間まで秋冬物があって、それがお店に行って、今度は春夏物が戻って来て…季節が真逆(笑)。他には最近集めている古いローロデックスや、アメリカで見つけた布張りの折り畳みチェアとか…来年の夏はテント生地と一緒に海のイメージにしても面白いかなって。そんなふうに次のネタを考える場所ですね」
 日本のヴィンテージの歴史を変えた伝説的な人物。それを忘れるほど気さくで柔らかな印象の中にも刹那、確固たる信念とこだわりが垣間見える。当然交友関係も多岐に渡るが、それを語る姿もまた、リスペクトの思いに満ちあふれたものだ。
「このサングラスも『バカにしてるんですか?』と思うぐらい、めちゃくちゃ面白いんですけど、ジェネラルリサーチの小林(節正)さんは『ただの日よけだよ』って仰るんです。でもすごく理にかなったものなんですよね。'30年代のヴィンテージによく似たものがあるんですが、使うには重いんです。それを軽いプラスチックに作り替えて、かつ古さを感じさせないっていう…さすがデザイナーさんだと思いますね」
 数えきれないほどのモノをその目で見てきた内田さん。そんな彼に、一生モノの定義を訊いてみた。
「僕は変化をするものを好むみたいなんです。デニムの色落ちのようなマイナスの変化も、白いものに汚れが乗るプラスの変化も好きで。逆に変化する途中で壊れちゃうものはアウトだし、常にきれいな状態で保たなきゃいけないものは自分には扱えない。このカップも取っ手が取れたら花瓶にしようとか、色鉛筆がなくなったら違うものを挿そうとか…本当に気に入ってるなら変化を楽しみながら使う。それができるのが一生モノじゃないかなと思いますね」

写真を拡大 買い付けにノートとペンは必需品と言う内田さんが、パリで見つけたイタリア老舗製紙メーカー〈FABRIANO〉の色鉛筆。「丸めて持ち運びできるんですが、ダック地を巻いてる感じが弾丸みたいで…ハンティングっぽくていいなと。事務所でもベルトにマジック挿して真似してます」
写真を拡大 イタリア製折り畳みの<Ray-ban>(写真右下)は車を運転するとき、<THRASHER>(同左)は海に行くとき、と使い分けるが、その中でも特にお気に入りなのが本文中でも触れている<GENERAL RESEARCH>(同左上)。「こだわりは特にないんです。でもどれも外れると寂しいんですよね。常にセットで、車のダッシュボードに入っています」
写真を拡大 〈白山眼鏡店〉の老眼鏡は「ちょうど今日出来上がったんですよ。そろそろ(老眼鏡を)作らなきゃいけなくなって、スタイリストの大久保(篤志)さんに薦められて行ったら、すごく丁寧に測っていただいて。前から目をつけていた純銀フレームに金を合わせてツートンにしました。これは一生モノですね」
写真を拡大 時計のバネ棒外しはスイスの〈BERGEON〉で、お客さんの時計を店舗オリジナルのベルトに付け替えるとき使用。一方、ドライバーは壁付けの家具を取り外すときに。「速すぎると逆にネジ穴を壊しちゃうんですが、ドイツ製の〈BOSCH〉はちょうど良くて重宝しています」
写真を拡大 家族で益子を訪れた際、陶芸家の阿久津忠男による益子焼の食器シリーズにひと目惚れ。「藍っぽく見えたので、デニムと一緒にお店で陳列しようと買ったんです。そしたら自分でも欲しくなって、同じ色の大皿やお猪口などとセットで。これは氷を入れてアイスコーヒーを飲む用に」