たっぷりのあんこに塩バター。これが名古屋の「モーニング」の王道の小倉トースト。「小倉」あんの小倉の由来とは?『日本の異界 名古屋』(ベスト新書)の著書、清水義範氏が理由を語る。

小倉トーストは名古屋の味

 

 一般に、1955(昭和30)年ごろから広がって、今ではほとんどの喫茶店にあるメニューになっているというのだが、調べてみたらそのルーツは古かった。

 若宮八幡社(中区)の裏に、現在「喫茶アリ」という喫茶店がある。実はその場所には2002(平成14)年まで喫茶店「満つ葉」という店があったのだ。

 その店は大正時代には栄の現・三越前にあって、ぜんざいが人気メニューの甘味屋だった。しかし、世の中がハイカラブームになったので、バタートーストも出すようになった。1921(大正10)年頃のことだ。そうしたら旧制八高(現・名古屋大学)の男子学生たちがトーストをぜんざいにくぐらせて食べていた。その姿を見て、店主夫人の西脇キミさんが、あんをトーストに挟む小倉トーストを考案したのだという。

「満つ葉」は後に若宮八幡社の裏に場所を変えて営業していたが、2002年に閉店。

 あとを受けついで「喫茶アリ」となった店も、この小倉トーストを出し続けているのだ。

 そしてそれが次第に広がって、名古屋名物のようになってくる。よく言われるのは、

 名古屋は古くから菓子作りと茶の湯の文化が盛んで、小豆を使った菓子になじみが深い土地柄なんだという説。それで小倉トーストはあまり他の地方には広がらず、名古屋だけのものになったらしい。

きしめんや志の田うどん、豆味噌やところてんなど、名古屋のB級グルメの歴史は『日本の異界 名古屋』(ベスト新書)に詳しい。