“良いもの”の定義とは何だろうか。長く使えること、高価であること、
使い勝手が良いこと…きっと人の数だけ正解が存在する永遠の難問。
その人の生き方が見えるもの、それもまた、ひとつの定義だ。
“良いもの”と暮らす方々に、「私の好きなもの」を訪ねて。

注:文中の内容は2016年秋取材時のものです。

 

【My Favorite Things #003】
シンプルで飽きないもの。
タナダ ユキさん 映画監督

写真を拡大 [PROFILE]1975年生まれ、福岡県出身。『百万円と苦虫女』『四十九日のレシピ』など数多くの映画を手掛ける傍ら、ドラマやCMの演出、小説なども上梓。

「モノを買うときには吟味に吟味を重ねます。でもこだわりとかはないんです。そのときに出会ったもの、デザインが気に入ったものという感じで。もともとブランド物や高級なものにそんなに興味を持っていないというのもあるんですけど…」

 そう語るのは、映画監督のほか脚本家や小説家としての顔も持つタナダユキさん。彼女にとっての“良いもの”の定義を訪ねると、「飽きないこと」という答えが返ってきた。

「高い、安いじゃなく、本当に飽きなければ…例えば、料理の道具だったら丈夫で長く使えるもの。それこそ、一生使えるぐらい。インテリアもデザイン重視ですね。物を書く仕事をしているので、いい椅子が欲しいとは思っているんですけど…なかなか合うものがなくて、今は普通のものを使っています。でも、作業机のようなものは自分で作りました。鉄製の脚と脚場板を買って、ドリルでネジを留めて…既製品で買おうとすると、欲しいサイズだと結構な値段がするんです。自分で作れば、材料で2万円ぐらいで済むので」

 欲しいものがないときは、自分で作るというタナダさん。紹介いただいた革製のケースもそのひとつ。

「作るのが面白いというか、私にとってひとつのストレス解消法なんです(笑)。『こういうのができた!すごい!』みたいな。忙しいときに限ってやりたくなるので困ります。本当に、現実逃避ですね」

 そんなタナダさんがいつか欲しい、憧れの“モノ”を尋ねてみた。

「革専用の“腕ミシン”です。今は中古でしか手に入らないんですが、少し作りこんだデザインの鞄になると普通のミシンだとなかなか難しくて。手縫いで作れないこともないんですけど、私、できるだけ手縫いしたくなくて(笑)。なるべく早く縫いたい。作る時間を楽しむとかなく、早く完成が見たいんです。いつか手に入れたら作ってみたいですね」

写真を拡大 カバンは使って行くうちに身体に慣らしていく、その過程も楽しむのがタナダさんの流儀とか。これは〈marimekko〉のトートバック。「主に仕事用ですね。パソコンや書類を入れたりするのにちょうどいいんですよ。革と帆布の感じがいいなと思って買ったんでけど、正直使いづらく(笑)、まだ慣らしている最中です」
写真を拡大 1940年代のスイス国鉄駅で採用されていた駅舎時計をモチーフにした、〈MONDAIN〉の代表作。「最初は高校生のとき姉からもらったんですが、なくしてしまって。でも気に入っていたので同じものを買い直したぐらい。ベルトや電池を入れ替えて、長く使っています」
写真を拡大 頂きものの陶器。可憐な小さな花が特徴ののOstindiaシリーズのカップ(写真右)にはミルクティーを、沖縄土産という白の湯呑み(同左)はほうじ茶を。「よく陶器をプレゼントしてくださる方がいらっしゃって。自分でも旅先で陶器市などがあると、つい覗いてしまいますね」
写真を拡大 瑞風扇と銘打たれた、和紙に繊細な絵柄を描いた頂きものの扇子。「こちらも暑い時期の撮影の際に頂いたものです。暗すぎないちょっとブルーが入ったグレーが気に入ってます。何より、これをくださった方がいろいろ考えて選ばれたと仰っていたので、そのお気持ちが嬉しいなと」
写真を拡大 多めに買ってあった革の余りを見て思い立ち、自宅のミシンで制作した自作の革製“MacBook入れ”。「封筒みたいなデザインを革で作りたいなと思い。ヌメ革の、時間が経つと色合いが変化していく感じが好きなんです。これはまだ肌色っぽいですけど、これから茶色っぽく変わっていくのが楽しみですね」
写真を拡大 仕事でイギリスを訪れた際に立ち寄った、サー・ジョン・ソーンズ美術館のミュージアムショップで購入した〈CHASE&WONDER〉のポーチ。「単純に私が獅子座というのもあったんですが、キャラ化された丸っこい絵柄が苦手で。リアルなんだけどハットなどちゃんとデザインされているのが気に入ってます」