三十年ぶりに母と暮らしてわかった、「お母さん似」の意味

連載「母への詫び状」第二回〉

 子供の頃から「あなたはお母さん似ね」と、よく言われてきた。ぼくには2つ上の兄がいるが、親戚のおじさんやおばさんはたいてい、兄を「父親似」と見なし、ぼくを「母親似」とジャッジした。

 普通、小さい男の子が「お母さん似」と言われても、ピンと来ない。素直にうなずけないものではないだろうか。

 しかし、三十年ぶりに母と暮らすようになり、その意味が少しずつわかってきた。

 最初にぎょっとしたのは、ケータイ電話の着信メロディが同じ曲だったこと。次に驚いたのは「脳トレのお絵かき」である。 

『川島隆太教授の 脳を鍛える大人のDSトレーニング』という、大ヒットした任天堂DSのソフトを知っているだろう。実家にもこのソフトがあった。

 ボケ防止になればと、兄が買ってあげたものらしい。父はちっとも興味を示さなかったが、母はときどき手にして計算問題を解くなど、脳トレに励んでいたようだった。

 この『大人の脳トレ』の中で、たまに「お絵かき」の問題が出されることがある。
「パンダの絵を描いてください」
「こいのぼりを描いてください」

 などなど。出題されたら、タッチペンで絵を描き、あとで正解の絵と見比べる。

 ぼくはこのお絵かきがまったく出来ない。人間にはこれほど苦手な分野があるのかと、絶望するくらい絵ごころがない。

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