母親ではなく「父親として子供がほしい」という心理

 個人的に、私は「女性だから子供はあえて作らない」という思いがあります。でも妄想として、自分が男性だったら、女性に3人ぐらい産んでほしいなという気持ちもすごいあるんです(笑)。

 イスラエルやドイツで活動している社会学者の書いた『Regretting Motherhood 』という、母親になったことを後悔している女性たちを扱った研究の論文が書籍化されているんですけど、その論文に基づいて、ドイツのライター、作家さんたちが自分の経験を書くという流れがあります。そのうちの一冊で、『母親であることがハッピーだという嘘』というタイトルの本があって、そのサブタイトルが『私は母親ではなく父親になりたかった』です。読んでみると悲しい意味で納得してしまう部分がありました。

 出産・子育てでは、女性の負担が大きく仕事を少し制御したりだとか、出産によってホルモンバランスが崩れてしんどくなったりとかありますよね。でも、もしそうした苦労や苦痛をしないで子供が3人ぐらい持てるのなら、今、子供がいてもいいんじゃないかという気持ちはちょっとあるんです。それは自分は男性にはなれないので本当の妄想ですけどね。

吉田(潮:コラムニスト) 拙著『産まないことは「逃げ」ですか?』の中でも、サンドラさんが紹介してくれた本をいくつか取り上げているけど、これって日本では翻訳されてないのよね。

サンドラ さっき紹介した『Regretting Motherhood』というのはイスラエルのOrna Donathさんという社会学者が書いた論文なんです。その論文は子持ちの女性に「今の時点であなたは子供を持つ前の段階に戻れたとして、もう一度子供を持ちたいと思いますか? それとも思いませんか?」という質問をして、「No(いいえ)!」と答えた23人の女性にインタビューをした話なんですね。そのことがヨーロッパとイスラエルですごく話題になって、大きく取り上げられたんです。

中川 それは実名で書かれているのですか?

サンドラ さすがに仮名ですね。その子供に読まれたら「まずい」とかあるので、ニックネームを使っています。それを受けて本を書いた人たちは実名で出していますね。私の場合は子供を産んでこうでした、やっぱり大変でしたみたいな内容なんですけど。それらの本が見事に一冊も日本語には翻訳されていないんですね。

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