「ミシュラン三ツ星レストラン」を制覇した男がいる。男の名は藤山純二郎。その正体は…政治に「全財産」をはたいた情熱的な代議士、あの藤山愛一郎の孫! その情熱のDNAを受け継いだ、過剰なグルメ紀行をお届けする。胸やけ必至!?の1冊『世界のミシュラン三ツ星レストランをほぼほぼ食べ尽くした男の過剰なグルメ紀行』より抜粋。 

三ツ星のためだけに、旅に出る。

 多くの人びとを魅了する『ミシュランガイド』の「三ツ星」とは何か。ミシュランの星には、それぞれ意味がある。
 一ツ星──そのカテゴリーで、特に、おいしい料理。
 二ツ星──遠回りしてでも訪れる価値のある素晴らしい料理。
 三ツ星──そのために旅行する価値のある卓越した料理。

 だから僕は、三ツ星のためだけに、旅に出る。

藤山が所有する世界の『ミシュランガイド』の一部(写真/平山訓生)

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 昔、船乗りたちは、星を見て、行く手を決めた。

 北半球であれば、つねに真北にあって動くことのない「北極星」を、南半球にいれば、南十字星の縦の長さを5倍に伸ばしたところにある星を「天の南極」と決め、大海の中を進む自分の船の方角を定めた。当時の船乗りにとって、そうした星はまさに、生きる勇気であり、その先への希望であった。

 藤山の「三ツ星」も同じだ。

 方角こそ一定していないが、星は世界各地で瞬き、僕を呼んでいる。特に、新「三ツ星」はより一層、強い光で僕を招いていた。だから、藤山は行った。それも、新しく「三ツ星」に輝いた店があれば、大きく舵を切り、その年に自ら足を運び、心ゆくまで料理を堪能した。

「三ツ星」と言っても、光の放ち方は、さまざまだ。予約が殺到して、ほとんど不可能だと言われている店があれば、世界各国の食道楽たちと席を奪い合い、藤山は必ず勝利?した。

 日本人がめったに足を向けないドイツやオランダの田舎町であっても、「三ツ星」さえ煌いていれば、野を越え、山を越えて、星を頼りに、ひとりで飛行機や電車で最寄りの空港や駅まで出向いて、そこからはタクシーを利用して食べに行った。

「どこから来たんだ」

「日本から」

「ウワーォ!」

 そのたびに、どれだけ、シェフは喜んで、歓待してくれただろうか。もちろん、毎年のように「三ツ星」をピカピカさせている超一流店にも何度も行っている。

 ただいま114店制覇中です!

 フランスの「アラン・デュカス・オ・プラザ・アテネ」、「ランブロワジー」、「ジャマン」(現在は店名と場所は同じで、無印掲載だが、経営もシェフもロブション氏とは無関係)、「オーベルジュ・ド・リル」、「トロワグロ」、「ポール・ボキューズ」「ムーラン・ド・ムージャン」(現在非掲載)など、ドイツの「アマドール」(現在はオーストリアの首都ウィーンに移転して二ツ星)、「タントリス」(現在は二ツ星)、ベルギーの「コム・シエ・ソワ」(現在は二ツ星)、スペインの「エル・ブジ」(閉店)、「エル・ラコ・デ・カン・ファバス」(閉店)、イギリスの「ウオーターサイド・イン」、「ザ・オークルーム・マルコ・ピエール・ホワイト」(閉店)、イタリアの「レ・カランドレ」、モナコの「ルイ15世・アラン・デュカス」、スイスの「ジラルデ」(現在は店名変更して、シェフが交代したが、三ツ星)、香港の「龍景軒」、マカオの「ロブション・ア・ギャレラ」(現在は移転して「ロブション・オー・ドーム」)、アメリカの「フレンチ・ランドリー」などなど、そして、日本の名店の数々……。

 現在、僕は、最新の『2017年版』(9月現在)で、三ツ星を獲得した全119軒のうち、114軒を制覇している。ただし、これらは取材ではない。僕自身の「生きがい」のひとつとして、もう28年間も続けている。

 したがって、すべて、自腹。自分のお金だ。料理だけでおそらく6000万円使った。なぜ、一介の会社員に過ぎない藤山が、そんなことをしているのか。そうしたお話をこれからしていきたいと思う。

『世界のミシュラン三ツ星レストランをほぼほぼ食べ尽くした男の過剰なグルメ紀行』より構成〉