初の著作『PITCH LEVEL 例えば攻撃がうまくいかないとき改善する方法』が、多くの選手、ジャーナリストから「最高に面白い一冊」と絶賛され、発売二週間で3刷、2万部を超えた岩政大樹氏。現役選手でありながら「書く」ことを続ける岩政氏が、ふだんは「取材をし書く側」であるジャーナリストに逆取材を敢行した。
「聞かれる側」はスペインサッカーに造詣が深い小澤一郎氏。話はスペインと日本サッカーの文化的差異、ジャーナリズムに及んだ。第二回。

「サッカー嫌い」に浸透する、スペインサッカーのすごさ

【第一回:「スポーツジャーナリストにはどうやってなる?」現役サッカー選手・岩政大樹が逆取材】
小澤 そもそも、毎日の練習で選手が必ずひとり記者会見をするんですよ。だからサッカーメディアだけではなく日常のスポーツニュースに、当たり前のようにあるんです、サッカーが。実際、僕が一番驚いたのは、サッカー嫌いを公言する知人の奥さんがいたんですけど、その女性がラニエリの戦術批判をしていたんですね。いついつにクビになるなんてことまで話をしている。サッカーが嫌いで興味がないはずの人にまで情報が届いている、そこはすごいなと思いましたし、差がある部分でしょうね。

岩政 なるほど。それはだいぶ日本と違うかもしれません。そういう経験をされて、日本に戻られたのはいつですか。

小澤 2010年の春に戻ってきました。2008年にユーロでスペイン代表が優勝し、ペップがバルセロナを率いていきなり三冠を獲って、と「スペインサッカー」が黄金期になるタイミングです。スペインで1年半、12、3歳のカテゴリーの指導もしていたんですが、その中で感じたのは、これは日本もてこ入れをしないとまずいなという危機感でした。やっぱり指導のきめ細かさが全然違うわけです。だから帰ったら主に育成年代を見るような書き手になりたいと思いましたね。

岩政 それはバルセロナやスペイン代表が黄金期を迎える前に、息吹みたいなのがあったということですか。

小澤 はい、ありました。アンダー世代の代表は結果を出していましたし、バレンシアでもイスコ(レアル・マドリード)、パコ・アルカセル、ジョルディ・アルバ(共にバルセロナ)に代表されるユース年代の選手がどんどん出てきて、そのときすでにトップチームに行くという話が頻繁にされていました。
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岩政 確かに錚々たるメンバーですね。

小澤 そういう選手たちが日本から出てくるイメージがわかなくて、なんでそういう選手がスペインから出てくるんだろうと思っていました。その中で興味をそそられたのがオサスナというクラブに行ったときに聞いたスポーツディレクターの言葉です。「うちのクラブはメッシを育てることはできないし、彼ほどの才能ある選手はそういないいけれども、メッシを止めるためのサイドバックは育成できる。守備に定評のある選手を絶対に育成できる」と。

岩政 なるほど。

小澤 そのときすでにモンレアルとアスピリクエタがトップチームに定着するかどうかというところに来ていました。結果、プレミアリーグでプレーするスペイン代表のサイドバックをふたりも輩出したわけです。長い時間を経て答え合わせができた感覚でした。戦略的にちゃんとやっているんだなと、とても印象に残っています。

岩政 それはすごいですね。何が大きいんでしょうね。

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