初の著作『PITCH LEVEL 例えば攻撃がうまくいかないとき改善する方法』が、多くの選手、ジャーナリストから「最高に面白い一冊」と絶賛され、発売二週間で3刷、2万部を超えた岩政大樹氏。現役選手でありながら「書く」ことを続ける岩政氏が、ふだんは「取材をし書く側」であるジャーナリストに逆取材を敢行した。
「聞かれる側」はスペインサッカーに造詣が深い小澤一郎氏。第三回では「メディア」の違いが鮮明になる。

メディアはまだ選手の言葉を引き出せていない

岩政 (自分のプレーの仕方をかえられる選手は日本ではなかなかいないのでは?の問いに)そうなんです、そうです。まさにそこですね。そっか、関わりあう意識が全然違うんだ。言われてみると、ブラジルの選手でも出し手と受け手が決まってるような選手っていますよね。こいつが持ったときは動き出す、とかそういうものが。

小澤 それは間違いなくブラジルのサッカー文化にあるんじゃないでしょうか。例えばダニエウ・アウベス(PSG)とかマルセロ(レアル・マドリード)ってそういうのが抜群にうまい。代表とクラブで組む選手が違うから、自分の役割を変えてると思います。アウベスがビッグクラブを転々として一年目であれだけフィットするっていうのは、間違いなくそういう能力高いんだろうと思います。本来、日本人はこういうところ、得意そうなんですけどね。相手を感じ取るとか、阿吽の呼吸とか、言葉があるくらいで。

岩政 いやあ、おもしろい。なるほど。ちょっとテーマを変えます。書くことを初めて十数年経たれているわけですけど、自分の中で変わってきたことはありますか。書くときに意識する、新しい気付きがあった、とか。

小澤 いろいろと経験をさせてもらってきて最近すごく思うのが書いた記事が、たとえば選手や実際にプレーしていた当事者たちに届いて、客観視できるものになるといいな、ということです。より多くの人に読んでもらうというより、もっとターゲットを絞って「僕はこう思いましたけれど選手はどうなんですか」というような記事です。

岩政 ほぉ……。そういうふうに思って書く方というのは少ないんですか。

小澤 うーん、わからないですけど、あまりいないかもしれないですね。

岩政 なるほど。それにしても、育成に関してもスペインについても、知らないことばかりなんで取材する側っていろんな知識を持たれてるなって思います。

小澤 いえいえ、聞いているだけですけどね。

岩政 でも結局、世の中って知っているか知らないかだと思うんですよ。僕も知らなきゃいけないことが多すぎます。でも人生はそんなに長くないんで、どこに特化して知っていくかを定めていかないとすべてはできないと思うし……。あとお聞きしたかったのが、日本において選手は語れることが少なくてもったいないと思ったりはしませんか。

小澤 あー、でも逆にこの「PITCH LEVEL」を読んで僕が強く思ったのは、やっぱメディアが選手のピッチレベルで起きている言葉とか感覚を引き出せていないんだなということでした。なかなか岩政さんみたいに現役時代から言語化できてる選手って少ないから、僕らがキーワードを与えることによって言語化してもらう作業って必要だと思うんですね。だからちゃんとそういうことを日本サッカー界においてしないといけないなと改めて思いました。

岩政 ただこれってサッカーを知っていないと難しいですよね。仕方ないと思っていますけど、たとえばサッカーをあまり知らない記者の方とかが来ると……記者の方もこういう感じのことをしゃべってほしいとイメージしますよね。その質問が見当違いだったりするとちょっと……(笑)。

小澤 サッカーに興味がない記者が多いことはひとつ問題だと思っています。スポーツ紙などには配属などもあって仕方ない面もあるのかもしれませんが。

岩政 突然、サッカーの担当になったという方とかいますからね。そうすると「次の試合どう戦いますか」とか「昨日どうでした?」くらいしか聞かれないですからね。

小澤 もちろん熱意のある方もいますし。

岩政 はい、それはもちろん。
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