女の子をスマートに食事に誘えること。それは男にとって大人になる試金石かもしれない。
あの子を誘って、いつもよりちょっといい店へ。
写真を拡大 訪れたのは銀座にあるトラットリア&ピッツェリア〈イゾラ ブル〉。薪窯で焼く本物のナポリピッツァとシェフ渾身の南イタリア料理を、気軽に楽しめる。季節ごとに入ってくる食材を使ったシェフおすすめの料理が出迎えてくれた。

よく食べる女の子は可愛い、という真実。

 銀座一丁目の交差点を一本入った路地に、その店はあった。会社からの帰り道は空腹なこともあって、美味しいお店がよく目に入る。暖かな光が窓からこぼれる軒先を通ると、ピザの焼ける香ばしい匂いにいつも鼻腔を刺激される、細長い4階建ての一軒家。いつか、こんな素敵な店に好きな女の子を連れていけたら…エスコートのできる男ってやっぱりスマートでかっこいいじゃないか。

 イタリアンが好きらしい、という情報を聞きつけ、勇気を振り絞って声をかけたのは先月の終わり。「一階に青いピッツァ窯があってね、そこで焼いてくれるんだよ」とスマホで仕入れた巷説を述べながら少し急な階段を上がり、3階へ。真ん中よりも端の席のほうがいいかなと、窓側の席を予約しておいた。いつもはチェーン店ばかりだから、こういうコース料理はほぼ初めてで緊張する。ナイフやフォークの持ち方はこれで合ってるかな…とおそるおそる手を伸ばすと、「イタリアンって、手で食べたほうが楽なときあるよね?」と屈託なく海老の尻尾をつまんで、彼女は微笑んだ。まるでこっちの慣れていなさを見透かされたようで、少し恥ずかしくもあり、内心ホッともしたけれど。

写真を拡大 この日の前菜盛り合わせは、タラとジャガイモペーストをのせたブルスケッタ、サーモンのカルパッチョ、水牛モッツァレラのカプレーゼ、生ハムの4品。

「うわ~、なんか美味しそうなのが来た!」と、供された細麺のパスタを前に彼女の顔がまた、ほころぶ。

 魚介のソースをふんだんに使い、その上には赤いチェリートマトが彩りを添えている。くるくると器用にフォークでパスタを絡めとり、口元に運ぶ様子を思わず目で追っていると、「もう、そんなにじっと見られると食べづらいよ~」と笑われた。女の子は自分が食べている姿を見られるのを恥ずかしがるけど、男の目線からしたらこれほど可愛い瞬間はないわけで。こちらとしては瞼の奥にしかと焼き付けておきたいのだ。

 ドルチェが運ばれてくるころには頬もほんのり赤らんで、いつも会社で目にする彼女とは比べ物にならないリラックスした表情に、今日のエスコートの成果があらわれた気がして、安堵する。白い壁とウッディな調度品で統一された店内で、この上なく幸福な時間は瞬く間に過ぎて行った。「美味しくて、食べ過ぎちゃった」と机に腕をもたれながら、「私、最近はいつも行くお店が決まっちゃってるから、今日は新鮮だったなあ。ありがとう」。新しい通勤ルートを開拓しようと、僕はそっと決意を新たにした。

写真を拡大 川口春奈 女優。1995年2月10日生まれ、長崎県出身。映画、ドラマに多数活躍。