かつて、家制度のシンボルとして、社会の隅々にまで浸透していた家紋は、現代社会にあっても形を変えて暮らしの中で輝いている。日本人の心と伝統美の中に溶け込んださまざまな家紋の姿を探る。
監修・文/楠戸義昭
1940年、和歌山県生まれ。毎日新聞社編集委員を経て歴史作家に。著書に『あなたのルーツが分かる 日本人と家紋』『日本人の心がみえる家紋』『城と姫』『山本八重』など多数がある。
干菓子(押し菓子)の型に使われている「梅」。写真提供/菓子木型彫刻 京屋

 高齢社会を迎えて、カルチャーセンターで学ぶ熟年世代が増えている。そんな人たちが趣味で学ぶレザー・クラフト、木彫り、刺繍といった講座で、恰好の教材に家紋がなっている。自分の家紋をデザインすることで、名刺にも等しい、自分だけの作品が出来上がるからだ。

 家紋といえば、水戸黄門のドラマでおなじみの葵紋を始めとして、お城など観光地で売っているストラップや根付けに、家紋入りのものが目につく。日本独特の伝統ある紋様が、かえって斬新ということで買う若者も少なくない。

 街を歩くと、和食の店や蕎麦屋の暖簾に、桔梗紋、蔦紋といった家紋が染め抜かれているのをよく目にする。割り箸を入れた紙袋やお品書きに家紋がついていて、器にも家紋が入っている店もある。

 和菓子屋も家紋の暖簾を掲げる店が目立つ。それだけではない、最中の皮が梅紋の形をしていたり、四角の皮に橘紋が型押しされているもの、また、どら焼きに家紋が焼印されているのを見かける。

『一個人 別冊 日本人の名字の大疑問』(2017年9月27日発売)より構成〉