老子第七十八章
天下に水より柔弱(じゅうじゃく)なるは莫(な)し 而(しか)も堅強なる者を攻むるに 之(これ)に能(よ)く勝つこと莫し。

★固い相手には、柔軟に向かう

 今月は、『老子道徳経』第七十八章の言葉を、ご紹介致します。「水はもっとも柔弱であるが、固くて強いものを攻めるには、これほど強いものはない」という老子の兵法の極意です。つまり、剛強には、柔弱をもって向かうのが良いというのです。
 これは、私たちの日常の過ごし方に、すばらしい示唆をあたえています。相手が強く出てきたら、こちらは柔らかく優しく対応するのがよいということなのです。あどけない孫娘がニコニコと話しかけると、今まで仕事のことで怒っていたおじいさまが、急に笑顔になる、そんな光景を目にされたことがある方も多いのではないでしょうか。

 赤ちゃんや幼児の無邪気な笑顔は、誰もを笑顔にしてくれます。日常の忙しさにかまけて、つい固い顔になっている私たちは、その幼児の柔らかさに大いに学ぶところがありそうです。相手が仕事の相手であっても、また家族であっても、こちらが相手を意識しすぎて、固い顔で、作為をもって当たるより、本来のありのままの笑顔で素直な気持ちで向かうことが良いのです。弱い自分、未熟な自分を隠そうという力みや見栄がない無為自然の姿こそ、最も強い生き方なのです。
 著名な「北風と太陽」というイソップ童話にも同じようなことがいわれています。旅人の分厚いコートを最後に脱がせたのは、冷たい北風の強風よりも、暖かい太陽の光だったのですから。 

 
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