なぜ、北朝鮮は日本に対して、威嚇行動をとり続けているのか? そもそも北朝鮮はなぜ、この様な国家になったのか? 中ロ情勢に精通する歴史家、田中健之氏が「周辺」から北朝鮮の本質を考察していく。新刊『北朝鮮の終幕』より10回にわたってお届けしたい。〈シリーズ!脱中国を図る北朝鮮⑤〉

中国にとって金正男氏の存在は、最大にして最後の北朝鮮圧迫のカードであった

李氏朝鮮の創始者にして初代国王

 朝鮮史を紐解く時、李氏朝鮮を創建した武将・李成桂の権力継承争いが有名です。李成桂は、重臣たちを巻き込んだ王子たちの激しい王位継承争いの中で退位しましたが、その後も王子たちによる王位継承争いは絶えませんでした。肉身の王位継承を巡る骨肉の争いに苦悩した李成桂は、失望から仏門に帰依したのです。

 李氏朝鮮末期の大院君と閔妃の権力争いも凄まじいものがありました。

 そして現代の韓国もまた、歴代大統領は逮捕されるか殺される、または自殺するなど、熾烈な権力闘争が渦巻いています。

 そうした激烈な権力闘争は、北朝鮮も例外ではありません。金正日の死後、激しい権力闘争が最近まで続いていたのです。

 金正男氏はそれを、「北朝鮮の特徴的な内部的な要因」であると表現した。それはまさに、朝鮮史の中に伝統的に特有な問題として度々生じてきた士禍と党争に他ならないのです。

 
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