年間に50人ほどの子供が虐待死している一方で、不妊治療を受ける人が増え続けている。2017年9月に開催されたセックスワーク・サミット2017秋「社会的養護と性風俗」において、特別養子縁組の現場の視点から、認定NPO法人フローレンス・赤ちゃん縁組事業部の藤田順子さんは、この問題について、こう語っている。「セックスワーク・サミット2017秋」第2部より。〈“赤ちゃん縁組”で悲劇をなくせるか〉に続く後編。
 

特別養子縁組は、子どもの福祉のための制度

 育ての親を希望する人に伝えていることは、特別養子縁組は子どもの福祉のための制度だということです。子どもの最善の利益のために家庭を得てもらうという制度なので、子どもが欲しい夫婦のためのものではない。これは児童相談所の里親研修でも、他の団体でも、どこでも必ず言われることです。そして子どもは性別や容姿やアレルギーの有無などの体質を選ぶことも勿論できません。子どものための制度だからです。

 特別養子縁組の子どもたちは、非常にリスクの高いところ、胎内環境が決してよくないところから生まれてくることも多いです。お母さんが妊娠中もタバコやお酒をやめていない場合もあるでしょう。成長過程で、発達障害が出てきたり病気になる可能性だってあります。通常の子育てでもそれは同じですが、そうしたことが分かったから「返す」ということはもちろんできません。委託時にわかっていることはすべてお伝えしますが、成長過程でどんなことが分かってきたとしても、受け入れて育てる覚悟が必要です。

 また、養親となる方には、子どもが養子であることを本人や周囲に伝える「真実告知」は必ず行ってほしいとお伝えしています。子どもには出自を知る権利があり、これは子どもの権利条約にも明記されています。2歳、3歳から子どもにわかりやすいことばで伝えていくための絵本もありますし、伝え方はその家庭、子どもによってそれぞれでいいんです。「産んでいなくても、あなたをとても愛している」「育てられなくても、あなたの幸せを願って一生懸命産んでくれた人がいる」ということを伝えてもらいたいです。

 そういったことの理解も含めて、子どもが生まれながらに背負っている複雑な背景をプラスに持っていけるようなそんなご夫婦であってほしいと願って、審査と研修を行っています。

 
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