なぜ、北朝鮮は日本に対して、威嚇行動をとり続けているのか? そもそも北朝鮮はなぜ、この様な国家になったのか? 中ロ情勢に精通する歴史家、田中健之氏が「周辺」から北朝鮮の本質を考察していく。新刊『北朝鮮の終幕』より10回にわたってお届けしたい。〈シリーズ!脱中国を図る北朝鮮⑨〉

60人を超える人々が、中国国家安全局によって逮捕された「延辺事件」

 

 中国の「実用主義外交」に普段から背信と不信感を抱いていた金正日は、ついに主導的な対応工作を決心することになったのです。

 そこで朝鮮労働党統一戦線部は日本の朝鮮総連、ロシアの高統連(高麗人統一総連合会)の担当部署で勤めていた一部の優秀な要員を、中国の在中総連合会管理部署に移動させ、中国駐在人員を大幅に増やしました。

 また、対南工作および海外諜報担当部署である、党の「35号室」と海外組織構築を目的とする「対外連絡部」要員たちも中国へ派遣し始めました。

 このように、金正日の指示によって隠密に推進した工作が発覚した事件が「延辺事件」です。

 この事件は、「35号室」工作員が中国東北三省の地方政府、公安、軍内の幹部らを買収し定期的に情報を入手していたことが発覚、摘発された事件です。

「延辺事件」では、60人を超える人々が、中国国家安全局によって逮捕されました。

 また、中国国家安全局は他にも韓国企業の安定的投資誘致のために、常に監視管理してきた北朝鮮工作員たちへの報復検挙作戦も行いました。

 このように「延辺事件」は、まさに中朝の外交問題にまで拡大するところでした。

 
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