偶然発見した50年前の母子手帳

連載「母への詫び状」第七回〉

画像:GATAG

 母子手帳を見つけた。ぼくが生まれるときの母子手帳だ。

 実家で生活するようになり、両親の金銭面の管理や、土地・家屋の権利書などまで把握しておく必要に迫られた。それらの書類を整理していたら、いっしょに出てきたのが母子手帳だった。

 もう50年も前のものだから、全体に黄ばんでしまってシミもある。デザインもそっけなく、最近のカラフルでファンシーな母子手帳とはまるで違う。でも、さすがにこれは粗末に扱えない。そっと中身をめくってみた。

 出生時の体重や身長はもちろん、妊娠6ヶ月の時点から「胎位」やら「心音」やらが、毎月記録されている。生まれた後の「日本脳炎」や「小児マヒ」の予防接種の記録などもある。領収書が貼られていて「ジフテリア予防接種手数料 20円」とある。安い!

 そんななか、気になる記述を見つけた。分娩の「正常・異常」にマルを付ける欄があり、「異常」にマルが付いていたのである。 

「え、おかあちゃん。おれ、異常分娩だったの?」

 母に聞いてみたら、意外な答えが返ってきた。

「あらー、母子手帳にそんげんこと書いてあるかね。それはさ、お医者さんにお願いして、そうやって書いてもらっただけだて」

 
次のページ なぜ「異常分娩」と書いてもらった?