創価学会にとって最重要書物である、池田大作著『人間革命』。同書を読み込みながら、彼らが掲げる「革命」について考えてみたい。宗教学者の島田裕巳氏が、新刊『「人間革命」の読み方』の中でこう説明する。

信仰を得て、「その人間の状態が根本から改まること」

 通常「革命」とは、「従来の被支配階級が支配階級から国家権力を奪い、社会組織を急激に変化すること」の意味で使われる。その代表がフランス革命であり、ロシア革命である。さらに、革命には「ある状態が急激に発展、変動すること」の意味もある。こうした意味で革命が用いられた例としては、農業革命や産業革命、そして、現在進行中の情報革命がある(いずれも『広辞苑』第5版による)。

 もともと、革命ということばは中国の「易姓革命」に由来する。易姓革命とは、現在の王朝が腐敗堕落し、天に見放されたとき起こる王朝の交代をいう。中国では、王朝の交代がくり返されてきており、なぜそれが起こるのか。さらには新しい王朝の存在を正当化するために、この易姓革命の考え方が生まれた。

 

 では、小説『人間革命』の「革命」は、このうちどれに該当するのだろうか。

 最初の国家権力の奪取とは結びつかないし、易姓革命とも関係がない。関係があるとすれば、2番目にあげた「ある状態が急激に発展、変動すること」であり、一人の人間の状態が、何かのきっかけで急激に発展していくことを意味すると考えられる。ただ、個人には変動はあてはまらない。

 創価学会では、そうした人間の急激な発展のきっかけになるものとして、信仰の獲得を想定している。創価学会の信仰を得ることによって、その人間の状態が根本から改まることが人間革命の基本的な意味なのである。

 信仰を獲得することで、その個人が大きな変革を経験するものとしては、「回心」、あるいは「改心」という現象がある。

 これは、それまで神を信じていなかった人間が、何かのきっかけで神が実在すると信じるようになり、それで生き方や生活が根本から変化するものである。基本的に、この回心は、キリスト教の信者になった人間に起こることとされてきた。

 ただ、仏教にも回心ということがある。こちらは、「えしん」と読み、「かいしん」とは区別されるが、回心という仏教の用語を元に、キリスト教的な回心ということばが生まれたものと考えられる。

 回心は、「邪心を改めて仏の正道に帰依すること」とされている。意味の面でも、キリスト教的な回心に近い。

 ただ、キリスト教的な回心の場合には、自らがいかに罪深いかの自覚を伴うことが一般的だが、仏教の回心にはその面は弱い。罪や過ちを悔い改めるという意味の「悔過(けか)」という行為があるが、さほど頻繁には用いられない。

『「人間革命」の読み方』より構成>