小説『人間革命』は全世界で4000万部超のベストセラーである。ちょっとその売れ方は尋常ではない。1965年の『人間革命』第1巻がいきなりミリオンセラー。以後もコンスタントに毎年売り上げが出ている。そして映画版『人間革命』も大ヒット。組織的な“買い”が入ったのかは定かではないが、とにかく“バカ売れ”なのだ。宗教学者の島田裕巳氏の新刊『「人間革命」の読み方』より抜粋する。

驚異的なベストセラーとなった小説『人間革命』

 創価学会は、『人間革命』と『新・人間革命』を合わせて、世界で4000万部が売れたとしている。どちらのシリーズも、日本語だけではなく、各国語に翻訳されている。

 出版科学研究所の統計をもとにしたベストセラーの年間ランキングでも、『人間革命』は上位を占めている。第1巻は1965年の第1位で100万部を超えていた。

 第2巻は1966年に第1位、第3巻は67年に第2位、第4巻は68年に第1位、第5巻は69年に第1位、第6巻は71年に第1位、第7巻は72年に第3位、第8巻は73年に第2位、第9巻は76年に第2位だった。

『新・人間革命』のほうも、かなりの売れ行きを示している。たとえば、第28巻は2016年のトーハン年間ベストセラーで第9位にランクインしている。なお『新・人間革命』の第1巻から第3巻までは1998年に刊行されており、この3巻は合わせてではあるが、トーハンの年間ベストセラーで第1位となっていた。99年には第4巻から第6巻までは第5位だった。以降も、まとめてということも少なくないが、必ずベストセラーの10位以内に入っている。

「人間革命」という名をより広く世の中に知らしめたのが、映画「人間革命」であり、その続編である「続・人間革命」であった。「人間革命」は1973年に、「続・人間革命」は76年に、シナノ企画と東宝の共同制作で映画化された。シナノ企画は創価学会系の映像製作会社である。

 映画「人間革命」は、1973年の邦画ランキングで第2位を獲得し、興行収入は11億9000万円に及んだ。この年の第1位は、小松左京のSF小説を原作とした「日本沈没」で興行収入は28億2000万円だった。「続・人間革命」のほうは、1976年のランキングで第1位を獲得し、興行収入も16億円にのぼった。

 どちらの作品も監督は桝田利雄で、脚本は橋本忍だった。桝田は「二百三高地」「大日本帝国」「日本海大海戦 海ゆかば」などの大作映画を監督したことで知られる。橋本のほうは「生きる」や「七人の侍」といった黒澤明監督の映画で脚本を書いたことでよく知られている。

 

 主演の戸田城聖を演じたのが丹波哲郎であった。牧口常三郎を芦田信介、戸田の妻を新珠三千代、やくざの島谷という男を渡哲也、日蓮を仲代達矢が演じた。『続・人間革命』では、山本伸一をあおい輝彦が演じている。どちらもオールスターの大作映画であった。監督や脚本はもちろん、出演者のなかにも創価学会の会員はほとんど含まれていなかった。会員と考えられるのは、『人間革命』で喧嘩する夫婦の妻役を演じた雪村いづみくらいではないだろうか。

 映画「人間革命」と「続・人間革命」は、ともに小説『人間革命』を原作としている。物語としては、戸田が第二代の会長に就任するまでが扱われているので、小説の第5巻までが下敷きになっている。そうした内容の映画であるわけだから、創価学会が、組織のため、会員のために制作した映画であることは間違いない。

 しかし、実際の映画製作に携わったのは、創価学会とは関係がない人間ばかりであった。映画「人間革命」の制作過程については、『新・人間革命』第18巻「獅子吼」の章に詳細に述べられている。それによれば、映画化を最初に考えたのは東宝のプロデューサーで、当時は東宝の社長をつとめていた田中友幸であった。

 小説『人間革命』がベストセラーになり、創価学会の会員が膨大な数にのぼっていることからすれば、プロデューサーである田中が、映画化によってかなりの動員数を見込めると判断するのは当然であったといえる。

『「人間革命』の読み方」より構成>