去る2013年10月19日、下北沢の書店「B&B」にて、AV監督であり劇団「ブス会*」主宰のペヤンヌマキさんと、精神科医・香山リカ先生のお二人によるトークイベントが行われました。「生きづらい女の道をポジティブに乗り切る幸福論」イベント内容を、6回に渡ってダイジェストでお届けします。
 

第5回「どす黒い気持ちにどう折り合いをつける?」

第1回「風俗とは何たるものかを知りたくて」はコチラ
第2回「AV業界に入ってみたら」はコチラ
第3回「ブスノートと好みのタイプ」はコチラ
第4回「男の前ではダメな自分を見せた方がいい?」はコチラ


 

 私いま31歳なんですけど、結婚するか子供を産むかリミットみたいなのが近づいてきて…。頭の中では結婚しなくたっていいさ、私は今元気だもん、幸せだもんって思ってるんですけど、心の奥底にどす暗いものがあって、私、ほんとにそれでやってけるかな、って不安になるんです。

昨日も職場の人に「入籍するんです」って言われた時にどす黒い気持ちが沸き起こってきて、「おめでとう」って言いながら、あなたも旅だっていくんですね、みたいな気持ちがありました。

「結婚しました、赤ちゃん産まれたので来てね」とかっていうホームパーティーのお誘いも、行きたくないっていうどす黒い気持ちが出てくるんですけど、このどす黒い気持ちとどう折り合いをつけていけばいいんでしょうか?

 




ペヤンヌ これ、私自身、折り合いがついていない状態なので(笑)、香山さんどうですか?

香山 それは結婚したいのか、それとも結婚した女に「私も」って指輪を見せたいのか、どっちなのかっていうのが大事ですよね。

結婚って一生続くじゃない?私、精神科医だから、と40代50代の主婦で、ほんとうに夫が嫌でしょうがないっていう人からの相談を受けることもあります。やや小調して言うと、男の人に聞かせられないような「出張に行く度に今日こそ飛行機が落ちますように」と願っているとか、災害が起こると「なんでうちの夫じゃなくてあの人が死んだんだ」とかって、ドギツいんです。

じゃあ、離婚すればいいのにって思うけど、だいたいの人が経済力がないからできないって言うのね。そういう人たちは自分で結婚を選んだのにそれを棚に上げて一方的に夫の悪口を言うんですよね。

たぶんそういう人は、結婚を選ぶときに「心変わりは誰もあるかもしれないけど、それよりも何があってもずっと一緒にいる」とかいう気持ちで結婚したというよりは、焦ってとか、友達に「おめでとう」とか「良かったね」って言わせたいとかそういう気持ちで結婚しちゃったんだろうなって思う。
「婚約したの」とか言うと、友達みんなが「いいわね」とか「すごい」って言ってくれるけど、その喜びは賞味期限があって、30代40代になって相手を嫌だなと思っちゃったら、その時のこと思い出して頑張るって気持ちになれないからさ、結婚は衝動的にしない方がいい気がしますけどね。

ペヤンヌ 私も「結婚したい」とか「子供を産みたい」って思うのって、ただ人から幸せって見られたいだけなんじゃないかって考える時あるんですよね。

 

周りの結婚・出産ラッシュが続くと頭が混乱する?

 

香山 私は子供がいないんですけど、実は、子供ってちょっと苦手なんですよ。犬猫は大好きなんですけど、実は赤ちゃんっていうのが苦手で。今になってみればね、産めない年齢になったから、心からほっとしていて、人に「子供はどうするんですか」って言われても「もう上がりましたよ」って言えるじゃないですか。

ペヤンヌ 欲しいって思う時期もなかったんですか?

香山 それがこんな私でさえ、30代の時に周りの結婚・出産ラッシュが続くと、頭が混乱しちゃって、私も子供好きかもしれないって錯覚したんですよね。その時にチャンスがあって産んでたらかわいいと思ったのか分からないけれど、でもそれは本当に子どもが好きとか欲しいとかっていう気持ちじゃなくて、遅れまいとか、人に見せつけたい、とか、年賀状送ってみたいとかっていう、ものすごい浅はかな気持ちだったような気がする。

ペヤンヌ とりあえず発表している人を見ると発表したい、みたいな。

香山 結婚を発表しちゃいけないってすればいいのにね(笑)。年賀状送っちゃいけないとかね。でも今、国は少子化対策でとにかく結婚させようさせようって必死だから、大震災とか起きると家族の絆大事だよってことをことさらに言うよね。あんなの国策で言ってるだけだから、それに踊らされて不用意なことしちゃうと大変ですよね。

ペヤンヌ 震災の時つらかったですね、彼氏もいなくて。あれを一人で乗り越えられたから、私もう大丈夫なんじゃないかと思っちゃいましたよね(笑)。

香山 あの時もね、患者さんの中には嫌な夫を一瞬見直したって人もいたんですよね。やっぱり頼りがいがあるとか。でもそれも一瞬だったね。喉元過ぎればやっぱり嫌でしたって(笑)。

(質問したお客さんに向かって)どうですか?一瞬でもいいから人に見せつけるために結婚したい?

 それもあるんですけど、私、子供が好きなので子供を産みたいっていう気持ちもあるんです。

 

卵子凍結はあり?
 

 

香山 それこそ患者さんの話でね、結婚してお姑さんお舅さんと気が合わなくて、すごい嫌いだったんだって。で、妊娠したら、嫌いなお舅さんの顔にそっくりな子供が産まれてきて、ものすごいショックだったという。

ペヤンヌ 子供産まれるイコール好きな人にそっくりな子供を、って夢みたいなのがあるけど、逆にそれだときついですよね。

香山 それから子宮が子供を欲しがっているとか言う人いるけど、あれ、私絶対嘘だと思う。そんなわけないもん。子宮なんてものを考えたりしない。

(質問したお客さんに向かって)子供は、自分の子供を産まなきゃ嫌なんですか?里子とかは嫌なの?

 微妙な年齢だから、産めそうで…。

香山 じゃあ卵子凍結っていうのをしておけばいいんじゃない?

 それ、かすかに考えています。

ペヤンヌ 私も調べましたそれ。

香山 あれは私いいと思う。

ペヤンヌ お金かかるんですよね?

香山 20~30万くらいね。でもそれでできるんだったら、賢い選択だと思うよ。

でもそんなのものがなまじあると気になっちゃうかな、40歳になってもまだ…って。

ペヤンヌ またさらに諦めがつかなくなるかも。難しいですね。


第6回「50歳過ぎて結婚していないのはおかしい?」に続く

 

 


香山リカ
1960年札幌市生まれ。東京医科大学卒業、精神科医。立教大学現代心理学部教授。豊富な臨床体験を生かし、現代人の心の問題のほか、政治、社会批評、サブカルチャー批評など幅広いジャンルで活躍する。著書には、『いまどきの常識』『「悩み」の正体』(以上岩波新書)『鬱の力』(共著)『しがみつかない生き方』(以上幻冬舎新書)、『くらべない幸せ』(大和書房)、『母親はなぜ生きづらいか』(講談社現代新書)、『しがみつかない死に方』(角川oneテーマ21新書)『ココロの美容液』(文藝春秋)『人生の法則』(ベスト新書)『「独裁」入門』(集英社新書)『気だてのいいひと」宣言!』『ほどほどの恋』『幸福の胸のウチ』(以上東京書籍)ほか多数ある。

 


ペヤンヌマキ
1976年生まれ。長崎県出身。AV監督/劇団「ブス会*」主宰。脚本・演出家。早稲田大学在学中、三浦大輔主宰の劇団「ポツドール」の旗揚げに参加。卒業後はAV制作会社に勤務した後、2004年に独立。フリーのAV監督として活動する傍ら、劇団「ポツドール」番外公演 ’女’シリーズ脚本・演出を担当。2010年、演劇ユニット「ブス会*」を立ち上げ、以降、全ての脚本・演出を担当。その他、NHK「祝女シーズン3」に脚本で参加するなど、幅広く活動している。著書に『たたかえ!ブス魂』(ベストセラーズ)。現在、週刊SPA!にてコラム「ぺヤンヌマキの悶々うぉっちんぐ」隔週連載中。「ブス会*」ホームページ:http://busukai.com