トルーマンは「側近たち」によって「ソ連の参戦は、日本を降伏させるには必要だ」と考えるよう誘導されていたのです。そしてその側近の正体とは…『日本は誰と戦ったのか』を上梓した、江崎道朗氏が、日本が衝撃の事実を暴露する。

◆日本政府は早期終戦を模索していた

 日本政府は昭和20年当時、なんとか早期終戦を実現しようと必死に模索し、日ソ中立条約を締結していたソ連を仲介に和平交渉をしようとしていました。この日ソ交渉を利用して日本の終戦を意図的に遅らせようとしたのが、ソ連の指導者スターリンでした。

 アメリカのカリフォルニア大学の長谷川毅教授は『暗闘 スターリン、トルーマンと日本降伏』(中央公論新社、2006年)の中で、こう強調しています。


 スターリンはさらに、日本がソ連参戦の前に降伏してしまうかもしれないことを危惧した。
 だからこそ、ソ連が対日戦争の準備を完了するまで日本が戦争を続けるように、アメリカが無条件降伏の要求をつらぬくことを奨励した。同時に、日本がソ連参戦を防止することができると信じるよう日本を欺こうとした。(同、141頁)

 ところが、こうした側面を日本だけでなく、アメリカのリベラル系の歴史学者たちも無視してきたのです。

 そこで、従来の日米両国の歴史研究の欠陥を是正するために、長谷川教授はソ連という要因を踏まえた国際関係史観、いわゆる「インターナショナル・ヒストリー(international history)」を描こうとしたと主張しています。

 この本は太平洋戦争の終結を、アメリカ、日本、ソ連の三国間の複雑な関係を詳しく検討して、国際的な観点から描き出すことを目的としている。(同、9頁)

 日本の降伏を論じるにあたっては、日本政府の意向だけでなく、当時の国際関係、つまりアメリカのルーズヴェルト及びトルーマン政権、ソ連のスターリンらの思惑と、それぞれの国の国内政治力学との緊密な結びつきも踏まえないと、その全体像は見えてこないということです。

 日本をひたすら糾弾する「偏狭史観」から、広い視野から複雑な国際関係と国内政治力学を見据えた「インターナショナル・ヒストリー」へと、歴史観の変更を迫った『暗闘』は「初めて完璧に描き出された太平洋戦争終結の真相」として第七回読売・吉野作造賞を受賞しました。

 その学問的業績に心より敬意を表しますが、残念ながらこの『暗闘』によって「戦争終結の真相」が完璧に描き出されたわけではない、というのが本書『日本は誰と戦ったのか』の立場です。まだ解き明かされていない「謎」があると考えます。