去る2013年10月19日、下北沢の書店「B&B」にて、AV監督であり劇団「ブス会*」主宰のペヤンヌマキさんと、精神科医・香山リカ先生のお二人によるトークイベントが行われました。「生きづらい女の道をポジティブに乗り切る幸福論」イベント内容を、6回に渡ってダイジェストでお届けします。
 

第6回「50歳過ぎて結婚していないのはおかしい?」

第1回「風俗とは何たるものかを知りたくて」はコチラ
第2回「AV業界に入ってみたら」はコチラ
第3回「ブスノートと好みのタイプ」はコチラ
第4回「男の前ではダメな自分を見せた方がいい?」はコチラ
第5回「どす黒い気持ちにどう折り合いをつける?」はコチラ

50歳過ぎて結婚していないのはおかしい?
 

 50歳過ぎて独身でいると、「人間として何か欠けている」みたいなことをあちこちで聞くんですけど、それにちょっとムッてくる自分がいるんです。

香山 でもチャンスがあれば60歳でも結婚したいと思うんですか?
 

 

 いや、したいと思っていないんですよね。結婚している自分や子育てをしている自分というのを昔からイメージできないんですよね。

結婚している人って、独身でいる人をちょっと下に見て、自分の人生を肯定したいのかなって思ったりします。でもどう考えても私、今、幸せだし。特に不幸だと思わないんです。でも人からそう言われてムッときている自分は、何かちょっとあるのかなって思ったりして。

香山 でももうちょっと待てば、結婚生活は本当に嫌で、だけども離婚するにできないっていう人が逆に「やっぱりあなたみたいな生き方の方が自由でうらやましいわ」とか言わないですかね?

 半々ですね。結婚して本当に幸せそうな人と、「結婚するんじゃなかった。あなたみたいに自由に生きたかった」っていう人と。

香山 半々っていったら、すごい低いレートの賭けというか、そんなものに賭けるって危険ですよ(笑)。8割幸せになれるならやってみてもいいけどね、半分の確率っていうとできないですよね(笑)。

こんなこと言うとあれだけど、地方とか田舎の暮らしだとね、やっぱり独り者だと夜何もやることがないとかであれだけど、東京にいれば、アフターファイブも楽しいことたくさんあったり、文化的なことも楽しんだりできますよね。

だから、どうしても子供が大好きで大好きでたくさん産みたいとか、そこまでしてでも一緒にいたい人がいるとかじゃない限りは結婚によるメリットって本当は少ない。でもそんなこと言っちゃうとどんどん少子化になっちゃうから、国はそれで困ってるから、結婚ってすごくいいものですよっていうアピールするしかない状況になっちゃってる。

でも、あんまりそういう世の中の雰囲気に影響を受ける必要はないんじゃないですかね。


 そうですよね。世の中の一部の人たちが、「子育てってこんなに素晴らしいよね」とか言いだしているから、ちょっと気持ち悪い(笑)。でも、こういうことを職場で言ったりすると、やっぱ負け犬の遠吠えにしか聞こえないからちょっと言えない。「結婚なさって立派ね」って言うしかない(笑)。
 


孤独死はうらやましい?

 

 

香山 でもね、大原麗子さんが孤独死した時、「本当にうらやましい」って言ってる人がいたんです。それは、その人は夫と子供と夫の両親と同居していて、いつも人がいて、一人になれない。

だから「きっと私は死ぬ時でさえ、一人になれない」って言うんです。「人に気を遣ったりとか、人に見られたりしながら死ななきゃいけないのは本当に嫌だ、死ぬときくらい自由に死にたい時に死んで、気づかれないっていうのは本当にうらやましい」って。それがすごく実感がこもっていて。

だからああいう孤独死事件があると世間の人はかわいそうに、とか言うけれど、そんなムードにすぐ影響されちゃったりする必要はないよね。

 孤独死したくないがために、辛い結婚生活を送るっていう人もいるから、それも変な話ですよね。

香山 そのために50年も60年も我慢したりして、揚句の果てに夫の方が先に死んじゃったりしたら結局自分は孤独死だっていうね(笑)。何のためにってこともあるからさ。

だから、謎めいた生活した方がいいんじゃない。あの人、本当はオフタイムすごいんじゃないの!みたいな。こないだ外国の人と歩いてたわよ、とかさ(笑)。なんか謎を振りまけばいいんですよ(笑)。ツイッターとかで嘘でもいいから、イギリスの人となんとかとか、人を煙に巻けばいいんですよ(笑)。

 最近、クラブ行って一人でオールしてみたりしています(笑)。どうせ一人でいるなら人生楽しんだ方がいいですよね。人からイタイとか言われても。

香山 楽しんでますか?ペヤンヌさんは。

 

 

ペヤンヌ 楽しもうとしていますね。一人暮らし、エンジョイしようとしています。

香山 あまり想像がつかないんですけれど(笑)、どんな風にエンジョイしてるんですか?何してエンジョイしてるですか?

ペヤンヌ ペットですね。猫と亀を飼っていて、家族って感じなんで。

香山 動物がいればね。動物がもっと長生きしてくれたらいいのにね。

ペヤンヌ そうですよね。ちょっと不安に感じるのが、ちょうど親とかも死んじゃうぐらいの時に、このペットも同時期に死んじゃって…。

香山 カメは万年じゃないの?(笑)

ペヤンヌ そうですよね。カメだけは残ってくれるかもしれないですけどね(笑)。

…他に質問ある方はいらっしゃいますか?
 

親からの結婚しろ攻撃をどう交わせばいい?

 

 今、28歳になって、親戚の人とかイトコとかみんな結婚してるんですけど、なんかもう肩身が狭くて狭くて…。親から結婚しろ攻撃が始まって、「いつ孫見れるんだろう」とかプレッシャーかけられて、そういうのをどう交わそうかなっていう。一方で、結婚っていいものなのかな、って洗脳されていくというか…。

香山 昨日だったかな、厚生労働白書で、男54.8%、女87.7%、平均すると86%の人がいつかは結婚したいって答えてましたね。そんなにみんなしたいものなの?

(質問したお客さんに向かって)いつかは結婚したい?

 うーん、分かんないですよね。いつかしたいのかしたくないのか。

ペヤンヌ 結婚したいと思う人がいたらしたいっていうことですよね?

 そうですね。

ペヤンヌ それは健全ですよね。

 でも、「結婚しろ」とかって親から言われたくないんですよね。

香山 「言わないで」って言ったらだめなんですか?

 言わないでって言うと今度は、回り道して言ってくるというか。

ペヤンヌ すごい言ってきますよね。全てを孫の話につなげようとしたりとか。私、ビッグダディを実家で面白いとかって見てたら、「そんな自分の子供一人も産んでないのに、人の子供見て何が楽しいのか!」ってすごい怒られて、なんでビックダディも見れないんだろうって。そんな肩身の狭い思いをすること自体が理不尽ですよね。
 


「子供にセックスしろって言ってることでしょ?」

 

香山 逆にうちの母親は突然、「私、気づいたことがあった。子供だけは産まない方がいいわよ」って言ったりするよ、私に。

ペヤンヌ えっ!それはどういうことですか?(笑)

香山 自分が子供を産んだことを後悔してるってことじゃないですか(笑)。私のためを思って言ってるみたいなんだけど、よく考えたら自己否定じゃないですか(笑)。でもさ、孫が欲しいってことは、子供を産んでほんとによかったってことだよね。お二人のことを、親はすごく満足してるんですよね。

ペヤンヌ そういう捉え方ができれば、すっきりするかもしれない(笑)。やっぱり考え方ひとつですね(笑)。

香山 いや、分かんないけどね(笑)。子供を持って良かったって思うから、その気持ちをあなたたちにも味わわせてあげたいとか、そういうことでしょ。

でもそれで孫を産めってすごいよね。だって子供にさ、セックスしろて言ってるってことでしょ(笑)。親ってある年齢までは、「変な男と遊ぶな」とか性的に禁欲をすすめるわけじゃない。「あんた、あの彼氏と変なことになってんじゃないでしょうね」とか言うわけでしょ。それなのにある時点から手の平を反して、「もっとやれやれ」みたく言うわけでしょう。どういうことなのこれは(笑)。

ペヤンヌ なんで親にすすめられてるんだろう、やることを、みたいに思っちゃいます(笑)。

香山 「私にセックスしろっていうことなの?」とかって親に言ったらどうなるんだろうね(笑)。すごい変なことだなって子供の時から思ってるんですけど。結婚式とかでも「一日でも早く孫を」とか「子供を」とか言うじゃないですか。それってみんなで「早くしろしろ」って合唱してることでしょ、すごい性にオープンだってことだよね。おかしいよね。…

すみません、なんかバカな話で終わってしまいましたが(笑)、本日はありがとうございました。

ペヤンヌ ありがとうございました。


<完>

香山リカ
1960年札幌市生まれ。東京医科大学卒業、精神科医。立教大学現代心理学部教授。豊富な臨床体験を生かし、現代人の心の問題のほか、政治、社会批評、サブカルチャー批評など幅広いジャンルで活躍する。著書には、『いまどきの常識』『「悩み」の正体』(以上岩波新書)『鬱の力』(共著)『しがみつかない生き方』(以上幻冬舎新書)、『くらべない幸せ』(大和書房)、『母親はなぜ生きづらいか』(講談社現代新書)、『しがみつかない死に方』(角川oneテーマ21新書)『ココロの美容液』(文藝春秋)『人生の法則』(ベスト新書)『「独裁」入門』(集英社新書)『気だてのいいひと」宣言!』『ほどほどの恋』『幸福の胸のウチ』(以上東京書籍)ほか多数ある。

 


ペヤンヌマキ
1976年生まれ。長崎県出身。AV監督/劇団「ブス会*」主宰。脚本・演出家。早稲田大学在学中、三浦大輔主宰の劇団「ポツドール」の旗揚げに参加。卒業後はAV制作会社に勤務した後、2004年に独立。フリーのAV監督として活動する傍ら、劇団「ポツドール」番外公演 ’女’シリーズ脚本・演出を担当。2010年、演劇ユニット「ブス会*」を立ち上げ、以降、全ての脚本・演出を担当。その他、NHK「祝女シーズン3」に脚本で参加するなど、幅広く活動している。著書に『たたかえ!ブス魂』(ベストセラーズ)。現在、週刊SPA!にてコラム「ぺヤンヌマキの悶々うぉっちんぐ」隔週連載中。「ブス会*」ホームページ:http://busukai.com