「書店が街から消えていく」そういわれて久しい。出版不況や、電子書籍など、リアル書店をめぐる環境は年々厳しくなっているが、このままリアル書店は街から消えてしまうのか。「いいえ書店はなくなりません!」今後、書店はどうあるべきなのか。 従来の枠組みをこえ、新たな試みを模索する現場の書店員の声をお届けする。
数々の仕掛けで注目を集める盛岡市さわや書店。フェザン店の店長・松本大介氏に語っていただいた。

本が売れない

至るところに手書きPOPが掲げられるフェザン店

 他人の芝生は青く見えるという。書店に勤める私にとっては、他のどんな業界も青どころではなく金色に光輝いて見えるのだが。

 本が売れない。出版不況という言葉が用いられて、もう20年ほどの年月が経過したのではないだろうか。なまじ本が売れた時代を知っているから、それと比較して「売れない」と口にする。他の業界から見れば、以前は出版業界も青々と輝く芝生に見えたことだろう。だがもはや、日常の風景と同化してしまえばその変化は気づきにくいものだ。

 この業界が下降線を辿り始めたあたりに働き始めた僕は、ある種の反骨心を持って芝生のツヤが失われるのを見てきた。だが、芝生はまだ枯れてはいない。

 全盛期、当時は何もしなくても売れた時代だったのではないか。きっとそれは当時、本が情報の伝達手段として優れていたことと無関係ではないだろう。

 今年の5月、僕が勤める株式会社さわや書店は「ORIORI produced by さわや書店」という新しい店を出した。盛岡駅に直結するビルの3階の端。160坪の売り場に、本、CD、雑貨、そしてパソコン教室まである。よく言えばバラエティに富んだ店、悪く言えば手当たり次第に色々と詰め込んだ一貫性に欠ける店といえるだろう。そこで店長として働き始めた僕は、ある種の危機感を抱いている。これら扱う商材のなかで、本ってこんなに売れないものなのかと驚いたのだ(現在はさわや書店フェザン店、店長)。

 
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