去る2014年1月9日、『メロスのようには走らない。』の刊行を記念して、著者の北原みのりさんと、漫画家・田房永子さんが「B&B」にて、トークイベントを行いました。北原さんと田房さんの軽妙な掛け合いに、終始笑いの絶えない2時間となりました。その一部を6回に渡ってダイジェストでお届けいたします!

第1回「2人は友だち?」

 

北原 まず、私たちは友だちなのかっていう話から始めたいと思うんですけど、私と田房さんの出会いが、2010年の夏で。私が「女の子たちで性について語ろう」っていうイベントをやったんですね。

 

田房 そう、そのイベントが20代以下の人限定だったんですよね。で、私が「30代ですけど行っていいですか?」って北原さんに聞いたら、「いいですよ」って言われて。

 

北原 そうだったっけ?

 

田房 うん、しかも、たぶん私の電話によって、その年齢制限が消えたんですよね。やっぱ無し、みたいになって(笑い)。

 

北原 あはは。

 

■意地悪な気持ちでイベントに

 

田房 私、当時、「女子アナのパンツ撮った!」みたいな雑誌でコラムを連載してたんです。

 

北原 何その雑誌(笑い)。

 

田房 そういう雑誌があるんですよ。アナウンサーのローライズから出たパンツを撮った!っていうのが載ってる男向けグラビア誌。そこに「女の人たちの現場に潜入する」というコラムを書いてて、セレブになりたい人たちが集まる教室とかいろんなとこに行ってたんですよ。

 

北原 へぇ。

 

田房 セレブになりたい人たちは、スワロフスキーがいっぱいついてるものっすごい重たそうなボールペンを普通に持ってたりとかして。

 

北原 あはは。

 

田房 肌も陶器のように美しくって、毎日メンテナンスしかしてないみたいな人たちが、彼氏にバレンタインのチョコをどうやって渡したらいいかとかを、全身チョコレート色のイタリアンなファッションでコーディネートしたオヤジ講師から学ぶ、っていう講座があったんですよ。

 

北原 何それ(笑い)。

 

田房 その講師が、高級チョコレート屋を紹介するんです。そんなネットで調べれば2分で分かるような情報で、メモることなんて一切ないのに、みんなスワロフスキーのペンで必死にメモッてるんですよ。そういうところに潜入して、こんなアホたちがいる、みたいな嫌な感じでコラムを書いていたんです。

 

北原 もちろんそういう目で私のとこにも来たんだよね(笑い)?

 

田房 はい、そうなんです(笑い)。

 

北原 ちょっと狂ったフェミニストが性について語る、みたいな(笑い)。

 

田房 その頃、女の人たちの集まりに行くのが、仕事じゃなくて趣味になっちゃったんですね。左翼の人とかのイベントに行くと、「全部、天皇制のせいだ」っていう人たちばっかりで。

 

北原 えーっ(笑い)。

 

田房 みんなすごい真剣に「婚活やモテ文化があるのは、天皇制のせいだ」とか言うんですよ。ちょっと最初意味がわからなくて、でもだんだん、すっごい面白くなってきて楽しかったんですよね。北原さんのイベントにもそういうものを求めて行ったんです。変なものを求めて行ったんです。

 

 

■私が来るべきところだった

 

 

北原 イベントの時、だんだん前のめりになってくる人がいて。それが田房さんだったんだけど(笑い)。田房さんが「ハイハイハイッ!」って質問してきて、その質問がすごく面白かったんだよね。AVの話とかしてくれて。

 

田房 2時間くらいのイベントで、1時間くらいは北原さんの半生を語っていたんですよ。最初の5分くらいで、ここは全然変な場所じゃない、と思って。私が来るべきところだった、って感じになっちゃって。

 

北原 そうだったんだ(笑い)。

 

田房 今までは後ろの方で俯瞰した感じで見ていたんですけど、それが北原さんのイベントでは前のめりで「私に話させろ」みたいな感じになって。

 

北原 田房さんがあまりにも面白かったから、連絡先を教えてもらって、ラブピースクラブのコラムをお願いしたんです。私としては、田房さんともう友だちの気分でいたんだけど、実はさっき田房さんと話して、田房さんはそう思ってなかったんだ、ということが分かりました(笑い)。

 

田房 違うんです、友だちって思うのは畏れ多いというか。あと、北原さんみたいに自分の仕事を持っている女性で、身分が下の者の話もちゃんと聞いてくれる年上の女性っていうのに、会ったことがなかったんです。

 

北原 身分が下の者、ってどこの王宮に暮らしてる人なの(笑い)。

 

田房 でもほんと、それまで出会った、自分の仕事を持っている年上の女性って「私を褒め称えなさい」というようなオーラを出してたんですよ。

 

北原 え~~~~?

 

田房 そういう女の人と接すること自体も少なかったけど、常に「すごいっすね!」って言ってなきゃいけないっていうか、言ってればいいっていうか、友だちにはならないというのが私の中で普通だったんですよ。だから北原さんがあまりにも下がってくれるので……

 

北原 下がってないよ(笑い)。

 

田房 北原さんにとってはたぶんそれが自然なことなんですよね。

 

北原 そういえば田房さんに電話する度、田房さんは毎回テンションが変わっていて、「ハイッ!」ってめちゃくちゃ緊張している時と、「そっすよね~」みたいな友だちノリの時とあって、情緒不安定な人だなって最初思ってたんです(笑い)。でも、そうじゃなくて、距離が分からなかったんだね。

 

 

→第2回「女同士の挫折を味わって」に続く


 

北原みのり
1970年、神奈川県生まれ。コラムニスト、女性のためのセックストーイショップ「ラブピースクラブ」代表。時事問題から普遍的テーマまでをジェンダー視点で考察した寄稿・連載多数。著書に、『はちみつバイブレーション』『フェミの嫌われ方』『オンナ泣き』『アンアンのセックスできれいになれた?』『毒婦。木嶋佳苗100日裁判傍聴記』『さよなら、韓流』『毒婦たち(共著)』など。

 

田房永子
1978年、東京都生まれ。漫画家、ライター。実母との戦いを描いた「母がしんどい」が話題に。現在は、90年代に中高生だったあの頃を描く「青春☆ナインティーズ」、“しんどい母”を持つ人のインタビュー漫画「うちの母ってヘンですか?」、独自の方法で過食の治癒に挑む「呪詛抜きダイエット」等、WEBや雑誌でコミックエッセイを連載中。