いまや年始の国民的行事となった箱根駅伝。数々の名勝負が多くの人の心をとらえてきたが、そのドラマは箱根路の217.1kmを走る前から始まっている。日頃の練習の合間に書いた日誌、内省、試合報告書に綴られた記録とともに、箱根を目指す選手たちの1年を追った「箱根駅伝ノート」を12月に上梓。自身、元箱根駅伝ランナーでもある酒井政人氏に、2018年箱根駅伝の展望について語っていただいた。

2020年〝東京五輪の星〟の走りを見逃すな

神奈川大学の絶対的エース・鈴木健吾選手。

 2018年の正月に開催される第94回箱根駅伝。最も注目すべき選手を1名挙げるなら、鈴木健吾(神奈川大4)になるだろう。前回は2区を区間歴代8位(日本人歴代5位)の1時間7分17秒で快走。チームを12年ぶりのシード権獲得となる5位に導いている。

 鈴木は神奈川大の主将&エースとして、今回は2区で過去4人しか突入していない1時間6分台、それから1時間6分46秒の日本人最高記録(順天堂大・三代直樹)を意識しているが、箱根駅伝以外にも大きなターゲットを抱えている。2月の東京マラソンに挑戦することだ。今年の5月、鈴木はこんなことを話していた。

「ハーフマラソンに出場する8月のユニバーシアードで金メダルを目指しています。夏になってしまうと、ガッツリした走り込みはできないので、6月の全日本予選会が終わってからしっかり走り込みをして、ユニバに臨みたいと思っています。今までは回数で距離を稼いできたんですけど、これからはマラソンを意識して1回で走る距離を伸ばしていくつもりです。夏合宿では40km走もやる予定です。昨年は35kmまでしかやっていませんが、今年は東京マラソンまでに40km走を何本かやっていきたいです」

 8月の台北ユニバーシアードで「金メダル」を目標にしていた鈴木だが、全日本予選会の後に右股関節を痛めて、7月は思うようなトレーニングができず苦しんでいた。一時は「棄権」も考えたが、それでも3位に入り、銅メダルを持ち帰った。故障のため、思い描いていた〝マラソンコース〟から外れたものの、鈴木は華麗なる復活劇を見せることになる。

 台北から帰国後は山登りから練習を再開した。10月の出雲駅伝は欠場して、9月下旬からは個人合宿を実施。10月前半の大島合宿では、2月の東京マラソンを見据えて35km走や40km走をこなして、12日間で450kmもの距離を踏んだという。

 そして11月の全日本大学駅伝。鈴木は「8割ほど」の状態で最終8区に起用された。アンカー勝負を警戒した有力校は、神奈川大を引き離そうと、肩に力が入り、思うような展開に持ち込むことができない。一方の神奈川大は、「トップに立たなくても前が見えるところで健吾に渡せばいい」と気持ち的に余裕があった。その結果、7区を終えてトップの東海大とは17秒差。鈴木は2.4km付近で川端千都(4年)に追いつくと、5km過ぎで一気に突き放した。後半はペースダウンしたものの、全日本8区19・7㎞を57分24秒で走破。日本人選手では歴代2位の好タイムを叩き出して、チームに20年ぶりの「大学一」をもたらした。

 次は箱根駅伝。そして2月には東京マラソンを控えている。

 
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