去る2014年1月9日、『メロスのようには走らない。』の刊行を記念して、著者の北原みのりさんと、漫画家・田房永子さんが「B&B」にて、トークイベントを行いました。北原さんと田房さんの軽妙な掛け合いに、終始笑いの絶えない2時間となりました。その一部を6回に渡ってダイジェストでお届けいたします!

第1回「2人は友だち?」 はコチラ
第2回「女同士の挫折を味わって」はコチラ
第3回「休み時間の編みもの問題」はコチラ
第4回「安田成美が友だちだったら死にたくなる」コチラ

第5回「"写ルンです"のトラウマ」

 

田房 私、中3の時に女子校だったんだけど、学校の最寄駅に「チャーリー」っていうカラオケボックスがあって、その「チャーリー」に毎週土曜日にみんなで行ってたんですよ。もうひとつ、近くに「マイケル」だかなんだかっていうカラオケボックスがあったんだけど、絶対「チャーリー」に行ってたんですよ。なんで絶対「チャーリー」に行ってたかっていうと、ドアがガラスになっていて、男子高生が覗いてくるから、交流が持てるからなんです。

 

北原 うん。

 

田房 で、ある日、初めて積極的な男子たちがバーンって入ってきて、一緒に歌おうぜってなって、「ほわ~!!」みたいになるじゃないですか。私5人グループだったんだけど、その中に一人、スタイルがよくていつも堂々としてるキレイな子がいて。当時、「写ルンです」で写真撮るのが普通だったから、みんな「写ルンです」がカバンに入ってて、歌う時に撮ったりしてたんです。それで急にその子が「ねっ、ねっ、写真撮ろぉ~」とか言い出して。男子高生が来たら急にしゃべり方が変わったの。「ちゃっちん撮ろぉ~」とか言って。えっ!どうしたんだろう、みたいな。

 

北原 あははは。

 

田房 その子がみんなを並ばせて撮るんだけど、「あれっ、あれっ、あれっ、あれ?」とか言い出して、さっきまでパチパチ普通に撮ってたのに、「あれっ、押っせなぁ~い」とか言い出して、そしたら男子が「あ、これ巻いてないよ~」とかってカリカリカリってして、そしたら「撮っれったぁ~」とか言ってたんですよ。

 

北原 すごいね、それ(笑い)。

 

田房 それがなんかトラウマになっちゃって。こんなに男性の前で態度が変わるということは恥ずかしいことなんだ、っていうトラウマになっちゃったんですよね。これはきついな、みたいな。その子の変わり具合を肯定できなかったんですよ。で、私はそれ以来、男性に対して態度を変えているところを女友だちに見せてはいけない、っていうのをすごく守ってきました。

 

■女友だちに対しての誠意

 

 

北原 そういう要素は一切、自分の中にははない?

 

田房 ありますよ(笑い)。

 

北原 あるよね(笑い)。

 

田房 あるからこそ、恥ずかしいんですよね。でもそれが私にとっては、女の子に対しての誠意なんですよね。女友だちに対して、「あなたたちを優先してますよ」っていう態度。やっぱショックだったんですよ、写真が撮れなくなった友だちが。そういうことするの?みたいな。

 

北原 わかるわかる。そういう病気が始まっちゃうのは自分の中にあるかもしれないよね。恐ろしい病じゃない?でも、そのカラオケでは女だけで楽しむとかじゃなくて、やっぱり男子に入ってきてほしいんだよね?

 

田房 うん、その後も、そのグループで男の子と会ったりするようになって、5人グループの中の2人はノリノリだったから、なんか王様ゲーム的なことを始めたがったりとか。でも私はそこまではいきたくなくて。そういうのはいらないけど、あくまで、あとで女子たちで盛り上がるためのネタ的なものとしていてほしい。

 

北原 わかるわかる。

 

■はじけちゃった方が楽しい
 

田房 美醜で判定されちゃうという話で、女同士で差別するっていうのは、やっぱり男によるものなんですかね?「美人ぶる女を嗤わない」とかメソッドがこの本にあったんだけど、それって私、できるかな、って思っちゃったんですよね。

 

北原 私、美魔女の人たちを取材したのがすごく大きくて。取材する前は美魔女に対して結構偏見を持っていて、自分大好きで若さに固執している人たちなんじゃないかって思ってたんです。実際、自分のことしか話さない人たちだっていうのは当たってたし、身勝手な感じも当たってるんだけど、でも、すごく自由で、若さとかじゃなくて、自分が心地よくいたいところを知ってるという感じだったんです。

 

田房 へぇ。

 

北原 それで気付いたんだけど、年をとっていくときにちょっとでもキレイであろうとする人たちに対して、すごく冷たい視線がこの社会にあるなと思って。美魔女をくすって笑う感じとか、気持ち悪いっていうこととか、そっちの方がやだっていう風に思えて。

 

田房 うんうん。

 

北原 美魔女の人たちって、ヌードになったりしたじゃん、「美ST」で。そういうことって、親戚の顔とか、夫の会社の人たちの顔とか思い浮かべたらできないと思うんだよね。だけどそれができちゃうっていう人の自分のことしか考えていないパワーとかすごいなと思って。こういう人たちを笑うのは簡単だけど、こっちの方が生き方としては楽しそうじゃんっていうことを肯定したいなと思って。自分の中でそういう笑う気持ちとか馬鹿にする気持ちとか、ああいう風に笑われる存在にならないように注意しようっていう気持ちは絶対あったと思うんだけど、でもこういう風に思って生きるよりも、はじけちゃった方がどんだけ人生楽しいかなと思ったら、そっち行きたいって思えたんですよね。

 

田房 でもどっかしらで、美人ぶっている人をえっ!って思ってしまう瞬間ってある…。

 

北原 女の人ってすごく客観性を求められるじゃないですか。自分がどれくらいの美人で、どれくらいのポジションにいてとか、すごく計りあって、それが求められていることがわかってる、みたいな感じになるのが非常に生きにくいし、そんなところで読みあって生きていったら、嫌な気持ちしか起きないよね。

 

→最終回「みんな”ババア”に怯えてる」に続く

北原みのり
1970年、神奈川県生まれ。コラムニスト、女性のためのセックストーイショップ「ラブピースクラブ」代表。時事問題から普遍的テーマまでをジェンダー視点で考察した寄稿・連載多数。著書に、『はちみつバイブレーション』『フェミの嫌われ方』『オンナ泣き』『アンアンのセックスできれいになれた?』『毒婦。木嶋佳苗100日裁判傍聴記』『さよなら、韓流』『毒婦たち(共著)』など。

 

田房永子
1978年、東京都生まれ。漫画家、ライター。実母との戦いを描いた「母がしんどい」が話題に。現在は、90年代に中高生だったあの頃を描く「青春☆ナインティーズ」、“しんどい母”を持つ人のインタビュー漫画「うちの母ってヘンですか?」、独自の方法で過食の治癒に挑む「呪詛抜きダイエット」等、WEBや雑誌でコミックエッセイを連載中。