1930年代、新型の高速双発爆撃機を求めたイギリス空軍に対し、名門航空機メーカー・デハヴィランド社が提示した試案はなんと、「木製」の航空機だった――。驚異の木製万能機モスキートの活躍を描く連載、第1回。
デハヴィランド・モスキート試作1号機。シリアルナンバーの「W4050」が胴体後部に記されている。

接着剤が生み出した木製の傑作機

 1930年代中頃は、今日「戦闘機より速い爆撃機」が完成すると、明日には「世界一速い戦闘機」が発表されるというように、航空関連技術が急速に進歩していた時期であった。
 このような目まぐるしい動きの中で、イギリス空軍は新型の高速双発爆撃機を求めていたが、その仕様となると漠としていた。というのも、肝心の空軍自身がドラスティックな技術進歩の渦中にあって、将来のかような機種に対する明確なビジョンを絞り切れていなかったからだ。そこで1938年、イギリス屈指の名門航空機メーカーであるデハヴィランド社は、高速双発爆撃機の試案を独自にまとめあげた。

 当時のヨーロッパには、ナチ政権下にあるドイツの強行な外交政策により戦争勃発の危機をはらんだ暗雲が垂れ込めており、イギリスも兵器の大増産に取り掛かろうとしていた矢先であった。ゆえに航空機に不可欠なアルミニウムなどの貴重な軍需資材は、その用途に優先順位が付けられていた。

 
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