1930年代、新型の高速双発爆撃機を求めたイギリス空軍に対し、名門航空機メーカー・デハヴィランド社が提示した試案はなんと、「木製」の航空機だった――。驚異の木製万能機モスキートの活躍を描く連載、第2回。
モスキート・シリーズで最初に生産されたのは、機銃などの固定武装を持たずパースペックス製の透明な機首を備えた爆撃機型のB Mk.Ⅳであった。

「ウドゥン・ワンダー(木の驚異)」と呼ばれた「永遠の万能機」

 さて、モスキートの配備が開始されると、もっと本機がほしいという実戦部隊からの要望が空軍上層部に殺到した。当時、イギリス空軍ではレンドリースによりアメリカから供与されたハドソン、ボストン、ミッチェル、国産のブレニム、ウェリントン、ボーファイターといった双発機を運用していたが、モスキートであれば、これらの機種が遂行するすべての任務を、より効率よく、しかも少ない損害でこなすことができたのである。だが配備が始まった当初は、いかんせん、生産が必要機数に追い付かなかった。

 実は、モスキートの優れた点はこれだけではない。何と、ドイツの単発戦闘機を振り切れるほどの高速を発揮できたのだ。
 当時、すでにドイツ空軍にはフォッケウルフFw190ヴュルガーという優秀な戦闘機が配備されていたが、同機がモスキートよりも高速を発揮できるのは高高度であり、中高度以下ではほぼ同速であった。ただしFw190は単発戦闘機なので、旋回性能は全高度においてモスキートに勝っていた。そこでモスキートのパイロットたちは、中高度でFw190に背後を取られると急降下で一気に加速し、同機を振り切るという回避機動を実施した。

 

 のちにモスキートの夜間戦闘機型や戦闘爆撃機型が登場し、前方固定機銃が装備されるようになると、前者はドイツのメッサーシュミットMe110やユンカースJu88の夜戦型に比して優秀なマイクロ波レーダーを搭載していたこともあり、自らはほとんど墜とされることなくそれらをバタバタと撃墜。一方、後者も303口径(7.7mm)機銃4挺と20mm機関砲4門という重武装で、白昼における一撃離脱ヒット・アンド・アウェー式の空戦により、Fw190やBf109を撃墜するケースがしばしば生じた。

 総生産機数7781機。実に43種類ものさまざまな型式が開発され、まさに八面六臂の大活躍をはたして「ウドゥン・ワンダー(木の驚異)」の渾名で呼ばれたモスキート。イギリスでは今日でも、「救国の戦闘機」スピットファイア、「勝利の爆撃機」ランカスターとともに、本機は「永遠の万能機」として、「モッシー」の愛称で多くの国民にその偉業を知られている。

 ところで、かような傑作機モスキートが主役と言っても過言ではない秀逸な航空アクション映画『633爆撃隊』をご覧になられた方もいらっしゃるかと思うが、次回からは、映画もかくやの本機の実戦での大活躍の一端を紹介しよう。