アリゾナ記念館に飾られている解説版

 真珠湾攻撃から七十六年後、真珠湾五十年式典から二十六年が経った二〇一七年九月、久しぶりに私は、ハワイのアリゾナ記念館を訪問しました。アリゾナ記念館ビジター・センターの展示の担当者から説明を聞きながら、歴史展示も見学したのですが、目を引いたのは、その入り口に飾られていた一枚の解説板でした。そこには、こう記されていたのです(著者の私訳)。

「迫りくる危機」アジアで対立が起きつつある。旧世界の秩序が変わりつつある。アメリカ合衆国と日本という二つの新興大国が、世界を舞台に主導的役割を取ろうと台頭してくる。両国ともに国益を推進しようとする。両国ともに戦争を避けることを望んでいる。両国が一連の行動をとり、それが真珠湾でぶつかることになる。

 真珠湾攻撃は、日米両国がそれぞれの国益を追求した結果起こったものであるとして、日本を「侵略国」であると決めつけた東京裁判史観を事実上、否定しているのです。

炎上する戦艦アリゾナ

 このビジター・センターを管理しているのは歴(れっき)としたアメリカの政府機関です。

 正式には、アメリカ合衆国国立公園局と言って、この公園局が専門家に委嘱して展示内容を決定しています。担当者は「できるだけ史実に沿って歴史的な事実を描こうとしている」と説明してくれました。

 日本人が知らないだけで、アメリカではさまざまなレベルで、「真珠湾攻撃=卑劣なだまし討ち」説や東京裁判史観が見直されているのです。ハワイには、在日米軍を含むアジア太平洋地域を管轄するアメリカ太平洋軍司令部があります。

 この太平洋軍司令部の情報将校だった方々とも、分厚いステーキを食べながら、いろいろと話をしました。そこで、アリゾナ記念館の展示について話をしたら、日米戦争が両国の国益の衝突であったというのは当然の話であり、何か問題があるのかという顔をされました。

 戦後も七十年が過ぎ、当時はわからなかった経緯も知られるようになるにつれ、アメリカでは、日米戦争についての評価も自ずと変わってきているのです。

『日本は誰と戦ったのか』より抜粋)