大人になるということは、見られる、ということ。
つまり、見られる、ということに備える武器を、僕たちはこれからのステージで身につけていかなければならない。大人であることの証明、きっとそれを先人たちは「作法」と、名付けたのであろう。置かれた場所において、ふさわしい振る舞い、相応しい時計を身につけられる大人になりたい。
そんな男のための、大人の時計作法入門。
穏やかなアラン編みのタートルネックニットに、レトロな表情の時計が似合いすぎるほどよく似合う。ヴィンテージ感のあるダイヤルデザインやレザーベルトの質感は、そのまま老舗の喫茶店に溶け込んでいくかのよう。

喫茶店にレトロ顔時計。

 もはや、サードウェーブなんて新しいカテゴリーを、嬉々として求める歳でもない。最近は、行列せず、恋愛トークやノートパソコンの音に邪魔されることもなく、ひとり静かに過ごせる、昔ながらの喫茶店の良さに改めて気付いた。よく磨かれた木製のテーブル、馴染み味の出たレザーシート。そんな年季の入った空間には、ギラついた時計は似合わない。やはり同じくレトロ感漂う、レザーベルトがいい。出来るならダイヤルデザインも、ヴィンテージ顔で。そして、まるで昭和の文豪を気取るように、スマホや週刊誌じゃなく、小説を手に時間を過ごすのだ。まるでそこだけ時が止まったかのようなアンティークな店内で、コーヒーとサンドイッチをパクつく。ふと時計に目をやると、いつのまにか時間が過ぎている。あくせくした現代社会では、これこそが贅沢なのかも知れない。

ゴールド三針が醸し出す、格調高い輝きを邪魔しないよう、シンプルなネイビートーンでセットアップ。時計の美しさを生かしつつ、華美な服装は避けることで、立ち居振る舞いも自然と大人のそれに近づくようだ。

バーカウンターにゴールド三針。

 10代の頃、オジさんが着けているゴールド時計を悪趣味だと思っていた。キンピカなケースが、いかにも成金なイメージがしてならなかったからだ。でも、肩掛けニットが流行ったように、バブリーなイメージも一周してお洒落に見えてきた。なにより、バーで一杯やるようになってからは、かつての大人の象徴だったゴールド時計が、どうにも気になって仕方ない。薄暗いダウンライトの下、グラスを持つその手に光るゴールドケース。特別な時間を過ごすなら、これぐらいラグジュアリーに着飾っても構わないはずだ。でも、これ見よがしなのは勘弁。なにげなく視線を手元に落とした時に、ふと気付くぐらいが丁度良い。だから、選ぶのは3針を筆頭にしたシンプルなダイヤルや、ギラツキがないレザーベルトのものを。ゴールドだからこそ、抑制を利かせる。このさじ加減が出来てこそ大人だ。