真珠湾攻撃は日本のだまし討ちではない? 驚きの真実をあぶり出す、インテリジェンスヒストリー!『日本は誰と戦ったのか』 を上梓した江崎道朗氏が日米開戦の新たな事実を語ります。 

諸説ある日米開戦ストーリー

スターリン。共産主義運動による死者は一億人を超える

 前回に述べたような、アメリカにおける真珠湾攻撃と日米戦争に関する歴史の見直しは、今後ますます進んでいくことになるでしょう。

 というのも、アメリカでは、「真珠湾攻撃背後にソ連の工作があった」とする「新説」が唱えられているからです。

 アメリカで著名な作家であるM・スタントン・エヴァンズと安全保障の専門家のハーバート・ロマースタインが二〇一二年、『スターリンの秘密工作員』を刊行し、こう述べたのです(引用者の私訳)。

そのようなソ連による政治工作は、ソ連が我々の同盟国であり、反共防護措置が事実上存在しなかった第二次世界大戦中に最も顕著であった。これはぞっとするほどタイミングが良かった。親ソ派の陰謀がアメリカの参戦に決定的役割を果たしたのだから。この意味で注目すべきなのは、真珠湾攻撃に先立って共産主義者と親ソ派が行った複雑な作戦である。この一九四一年十二月七日の日本軍の奇襲攻撃により、二千人以上のアメリカ人が生命を失い、アメリカは悲惨な戦いを始めることになったのである。(『スターリンの秘密工作員』p.90)

 アメリカにおけるこれまでの議論を整理しましょう。

 最初は、①「日本軍による卑劣なだまし討ち」、つまり「日本が悪かった」説でした。

 次に登場したのが、②「ルーズヴェルト民主党大統領が第二次世界大戦に参加するため、日本の機密暗号を傍受して日本軍の攻撃を知っていたのに、知らないふりをした」とする、「ルーズヴェルト大統領にも責任がある」説です。

 その後、日米戦争に至る経緯に関する歴史研究が進み、先に紹介したような③「日米両国はともに国益を追求した結果、戦争になった」説が登場します。

 ところが、アメリカの最新研究の世界では、④「ソ連のスターリンが秘密工作員を使って日米和平交渉を妨害し、日米両国の対立を煽り、日米戦争へと誘導した」とする、「スターリン工作説」が唱えられるようになってきているのです。

「共産主義者やスターリンの工作といった、そんなスパイ映画のような話が歴史として語られているのだろうか」と疑問に思われた方もいるでしょう。  

 しかし、「スターリンの工作」というのは、けっして、スパイ映画のようなフィクションの話ではありません。後述するように、アメリカ政府の公文書や当時の関係者による記録や回顧録や書簡など、膨大な裏付けがあります。

 それに、この主張は「日本は侵略を行った悪い国だった」という、いわゆる東京裁判史観と非常に異なっていますが、アメリカ人がみな一様に東京裁判史観のような歴史認識を持っているわけではありません。むしろ東京裁判史観を強く批判している人も少なからず存在します。

 
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