お風呂に入るとリラックスできるという人は多い。しかし、自律神経を整えるためのいくつかのポイントを抑えていないと、実のところリラックス効果が得られなくなってしまう。入浴時間を有効活用し、疲労を回復するにはどうすれば良いのか? 東京都市大学人間科学部教授の早坂信哉さんにお話を聞いた(雑誌『一個人』2018年2月号より)。

たった1℃の温度差が違った効果を生み出す

「全般的に湯船に浸かって体を温めるのは良いことですが、42℃を境目に効果が大きく違ってきます。これは温熱による、自律神経への刺激によるものです。個人差はありますが、だいたい42℃以上の湯に浸かると、その刺激で体は“熱い”と感じて、自律神経は交感神経優位の軽い戦闘モードに入って、一次的に心拍数が上がり、体の一部では血流量も多くなります」と早坂さんは話す。

写真を拡大 「自律神経」早見表

 一見、血流量が増えるのだから体には良さそうに思えるが、一概にはそうとは言えないらしい。
「現代の社会生活では、常にストレスを感じることが多く、交感神経優位の時間帯が長くなります。すると中途半端な筋肉や血管の収縮状態が続くことになり、その後の身体活動がないために、血流の開放が伴わないのです」。
 つまり、全身の細胞への栄養や酸素の供給が滞りがちになり、様々な悪影響が出てくるのである。

 では、その状態に陥らない、あるいは改善するためには、どのような入浴をすれば良いのだろうか。
「基本は40℃程度のお湯に10〜15分程浸かることです。すると深部体温が0.5〜1℃上昇します。一方で血圧が下がって、脈拍がゆっくりとなる傾向があることが研究で分かっています。副交感神経が優位になっている証拠で、筋肉は弛緩してリラックス状態になります」。
 これは血管の内側、血管内皮細胞から一酸化窒素(NO)が産生されるため。NOは血管を拡張させる作用があり、それによって血液が末端まで届けられる。

 

 また深部体温が1℃上昇すると、新陳代謝や免疫力が一時的に高まることが確認されていると言う。
「それに加えて、静水圧の効果もあります。身長170㎝で体重60㎏の人が肩までお湯に浸かった場合、全身に約600㎏の水圧がかかっている計算になります。これによって血液が心臓へ押し戻される現象が起き、全体的な血液循環が良くなるのです。湯船から出る時は、血管が水圧から開放され、勢い良く血液が流れ出します。これはマッサージと同じ効果で、ここでも血液循環を良くしてくれるのです」。
 さらには浮力効果も筋肉の緊張を解いて、血流を確保する役割を果たす。これらの効果は、シャワーだけでは得られないのだ。

雑誌『一個人』2018年2月号より構成〉