強力な副作用のイメージから、抗がん剤治療は「つらい治療」だと考えられてきました。それでもこの治療を選択する意義はあるのでしょうか。1万人以上のがん患者を治療し、SBRT(体幹部定位放射線治療)において世界トップクラスの治療実績をもつ(肝臓がんで世界1位、肺がんで国内2位)放射線治療専門医・武田篤也氏の著書『最新科学が進化させた世界一やさしいがん治療』 より、抗がん剤治療の効果と進歩について紹介します。

 一口に「全身化学療法」と言っても、用いる薬の仕組みに違いがあり、いくつかのタイプに分かれます。

「殺細胞性(さつさいぼうせい)抗がん剤」は、以前より用いられている抗がん剤であり、髪の毛が抜けたり、疲労感や食欲不振により体力が落ちるなど、一般的に「副作用がつらい薬」として認識されています。がん細胞の分裂の過程を阻害することで、増殖を阻止するのが狙いです。ただし、細胞分裂の盛んな正常細胞も障害を受けるため、白血球減少や脱毛、吐き気などの副作用が出やすくなります。

 ゲフィチニブ(商品名イレッサ)やベバシズマブ(商品名アバスチン)に代表されるのが、がん細胞が持つ特定の受容体や酵素 などに特異的に結合することで効果を発揮する「分子標的薬(ぶんしひょうてきやく)」です。比較的最近になって実用化された薬です。

 がん細胞に的を絞って作用するため、副作用は比較的少なく、治療効果が期待されます。分子標的薬の出現により、標準治療が大きく塗り替えられました。一方で、今までの殺細胞性抗がん剤ではみられない特徴的な副作用があるため、その使用には専門知識が必要です。

 そして今、もっとも注目されているのは、ニボルマブ(商品名オプジーボ)やペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)に代表される「免疫チェックポイント阻害薬」です。がん細胞が、免疫による攻撃から逃れるためのチェックポイントを、この薬がブロックします。これにより体内の免疫システムががんを敵と認識し、攻撃するように仕向ける薬です(これも分子標的薬の一種でもあります)。

 さらに、乳がん、子宮体がん、前立腺がんなど、がんの増殖に性ホルモンが関与しているケースでは、「ホルモン剤」が用いられます。ホルモン剤は効果が高いうえに、四つの種類の抗がん剤の中でもっとも副作用が少ないことが特徴です。

 
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