「BEST T!MES」連載30問30答、2018年最初に登場するのは2017年の雪辱を期す千葉ロッテマリーンズの新監督・井口資仁氏。卓越したバッティング理論はいかにして築き上げられたのか。その肝を聞く、後篇。

■ベースボールカードに見る日米打撃比較

前篇「日米通算2254安打、右方向へのホームラン…井口資仁の打撃論」

 

 日本の野球界では昔から、両腕を伸ばし切った位置でボールをインパクトするのが理想のバッティングだと教えられてきました。だから、指導者は「前(投手寄りのポイント)で打て!」と指導します。でも、この教えは誤解を生みやすい。なぜなら、両ひじを伸ばした体勢では、ボールにきちんと力が伝わらないからです。
 両肘を曲げてバットを持った体勢と、両ひじを伸ばしてバットを持った体勢。どちらがバットに力が伝わっているかは、野球を経験したことのない人にも、はっきりわかるでしょう。ボールは腕を曲げた状態……つまり体に近い位置でインパクトすべきで、厳密にいうと、ひじを伸ばすのは、そのインパクトの直後の出来事なのです。

 

 では、なぜ日本野球界で「前で打て」「ひじを伸ばして打つのが正しい」と認識されてしまったのか。僕は、ベースボールカードに原因があるのではないかと考えています。日本のプロ野球のベースボールカードでは、バッターが打ち終わってキレイに両腕を伸ばしているシーンの写真が使われていることが非常に多いように感じます。でも、何度も言いますけど、それは、ボールをインパクトした直後の姿なんです。

 もしメジャーリーグのベースボールカードを何枚か見る機会があったら、確かめてください。あくまで僕の感覚ですが、向こうのベースボールカードでは、バッターが本当にインパクトした瞬間……つまり両肘を曲げた状態でボールを捉えている写真が多く使われていると思います。
 日本では、多くの野球少年たちが、プロ野球選手はみんな、腕を伸ばし切った状態でボールを打っていると勘違いしてしまっているのではないでしょうか。この辺りにも、日米の野球界の違いがあるように思います。

 ひじを曲げた状態でボールをインパクトしてから、ひじを伸ばし切るまでは、実際には0.1秒にも満たない瞬間的な動作ですから、中には「両腕を伸ばして前で打て」という指導を自分の中で上手に消化して、実践できる選手がいるかもしれません。ただ、文字通りに、腕を伸ばした状態でバットを振ることを意識しすぎてしまったら、その選手はいつまで経っても強い打球を打てないでしょう。
 感覚的な内容を他人に正確に伝えるのは、本当に難しい作業です。経験を積んでバッティングの本質を知れば知るほど、そのことを実感しています。

〈明日の質問は…「Q22. 守備で大事にしていた技術はなんでしょうか?」です〉