もしもがんが見つかったら、どんな人でも決して冷静ではいられないでしょう。中には、「がんにかかったのは自分のせいだ」と責めてしまう患者さんもいる、と放射線治療専門医として1万人以上のがん患者を治療してきた武田篤也氏は指摘します。SBRT(体幹部定位放射線治療)において世界トップクラスの治療実績をもつ(肝臓がんで世界1位、肺がんで国内2位)同氏の著書『最新科学が進化させた世界一やさしいがん治療』より、もしもがんが見つかったときに気をつけたい心のもち方について紹介します

■「なぜ、がんになったのか?」は意味がない

 がんにかかった患者さんは、少なからず「なんで自分が?」という不条理感に襲われるようです。誰だって命に関わる病気になどなりたくありませんから、こういう気持ちを抱くのは自然なことです。しかし、その「なんで?」に答えはありません。強いて言うなら「長生きしているから」ということになるでしょうか。つまり、がんは誰だってかかる可能性がある病気だということです。

 寿命が長くなるにつれて、がんの罹患率は上昇しています。日本人は生涯でがんにかかる確率は、男性で五六%、女性で四一%です。そして、三人に一人はがんで亡くなっています(二〇〇七年国立がん研究センター がん対策情報センターによる推計値より)。

 もちろん、喫煙など明らかにがんの発症リスクを上げる要素はあります。しかし、実際に肺がんにかかった患者さんでタバコを吸っていない女性は多いですし、どれほど食生活に気をつけ、健康的な生活を送っていても、かかるときはかかります。ストレスも原因の一つなんて言われていますが、現代社会でストレスのない人なんていません。

 ところが、「がんになったのは、何かいけない行いをしたからだ」などと自分を責めてしまう患者さんがいます。あるいは、家族ががんにかかったときに「生活環境に問題があったのかもしれない」と、それをつくった自分を責めるのです。

 とくに女性に多いのですが、これが過ぎると大事な家庭にひびが入ります。また、おかしな宗教などに走ってしまうこともあるので注意が必要です。

 
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