「がん」と診断されたとき、自分自身で最善の治療法を選ぶことはできるのでしょうか。放射線治療専門医として1万人以上のがん患者の治療にあたり、SBRT(体幹部定位放射線治療)の第一人者である大船中央病院・武田篤也氏の著書『最新科学が進化させた 世界一やさしいがん治療』より、がんの治療方針の決定について解説します。

■おまかせするのも選択肢

 医師が患者さんの治療方針などを決定するときのスタンスは、「パターナリズムモデル」「シェアードディシジョンモデル」「インフォームドディシジョンモデル」という三つのパターンに分けられます。

 パターナリズムモデルは、父権主義モデルとも言われます。今でもほとんどの患者さんの場合、この方法によって治療方針が決められています。

 

 そこでは、子どものためによかれと思って行動していく父親のように、医師は患者さんの意見をあまり聞くことなく、医師が中心となって治療法を決定していきます。たとえ複数の選択肢があったとしても、細かい説明はされません。

「専門家である医師よりも患者さんのほうが正しい選択をするということはない」と考えて医師が治療方針を決めます。患者さんはその治療法の説明を受け、治療に同意します。

 患者さんからの質問にもまともに答えずに、患者の状況やその治療方針に至ったプロセス等をまったく説明しない、患者さんを見下しているような医師は論外です。

 一方で、がんを宣告され、頭が真っ白になっている状態で難しい専門用語を投げかけられた患者さんに、そこから一番いい方法を選択しろというのは酷な話です。

 それに、患者さんより医師のほうが治療に詳しいのは事実です。治療に関しては主治医に任せ、自分はどうやってがんと付き合っていくか、残りの人生で何を大切にしていくか、そうした人生の根源部分に集中するのもアリでしょう。
 私たちのようながん治療の専門家でも、自分ががんにかかったら「信頼おける医師にすべて任せ、細かい説明は聞きたくない」という人は多いのです。ですので、「先生の言うままに」と信頼できる医師におまかせしてしまうのは必ずしも悪い方法ではありません。

 
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