これに目をつけたのが日本の花屋さんと本屋さんの業界団体と代理店だった。サン・ジョルディの日は、男性は女性に赤いバラなどの花を、女性は一冊の本を贈り合う日として紹介され、平成3年頃からは主にラジオを中心にキャンペーンも展開されるようになった。うまく定着すれば本と生花というふたつの業界を活気づけてくれるはずだったサン・ジョルディの日だが、数次のキャンペーンも甲斐なく、このイベントが庶民に定着することはなかった。もちろん今でもサン・ジョルディの日にイベントを開催している本屋さんや花屋さんはある。だが誰もが知るイベントかと言われれば明らかに否。恵方巻きやハロウィンとは明暗を分ける形となってしまった。

 両者の明暗を分けた理由の最も大きなものは運であり時流だろうが、筆者は手軽かどうかも鍵になったように思う。チョコや恵方巻きは用意が容易なのに対し、本を人にすすめるにはそれなりの読書量が必要となる。まして相手が異性となればなおさら。これに加えて開放性の有無もあっただろう。バレンタインチョコが義理チョコ、友チョコと広がっていき、ハロウィンのコスプレも見せ合うイベントとして成長したのに対し、サン・ジョルディのバラと書籍は互いが贈り合うという閉鎖したもの。このあたりが今ひとつ広がりを見せなかった理由だと筆者は推測する。
 もっとも、だからこそサン・ジョルディの日はロマンティックであるとも言えるわけで、少子化に喘ぐ我が国の現状において、このイベントの復権は大いに待たれるところだったりするのである。