◆美術館と博物館、それぞれの目的

 

 日本には、独立行政法人 国立美術館が運営・管理する国立美術館が5つある。日本初の国立美術館である東京国立近代美術館、工芸に重点を置いてきた伝統を継承する京都国立近代美術館、世界文化遺産に選ばれた国立西洋美術館、大阪万博開催にあたって建設した万国博美物館を活用して造られた国立国際美術館、コレクションをもたない国立新美術館だ。
 博物館の場合、「国立」と名がつくのは東京、奈良、京都、九州の4か所。こちらは、独立行政法人 国立文化財機構が運営している。同じ国立でも運営元が異なるという違いはあるが、そもそも美術館と博物館に明確な違いはあるのか。

 一般的には、美術館は絵画などの芸術作品を中心に、博物館は遺物や資料などを展示しているイメージがあるかもしれない。しかし、博物館で絵画を展示することもあるのでややこしい。
 日本では、東京国立博物館が1872年、東京国立近代美術館が1952年に開館しており、海外と比べるとその歴史は浅い。そこで、海外にヒントがないかと「museum」という言葉を英和辞書で調べると、美術館と博物館の両方の意味があることがわかった。美術館を「art museum」とする場合もあるが、どちらも「museum」ということには変わりない。

 日本ではどうだろうか。大辞林によると、美術館は「美術品を収集・保管・展示し、一般の展覧・研究に資する施設」、博物館は「歴史・芸術・民俗・産業・自然科学などに関する資料を集め、整理・展示して一般の利用に供し、あわせてこれら資料の調査・研究をする機関」としている。これを踏まえるならば、どちらも博物館という枠組みに含まれていて、そのなかでも美術品に特化した施設が美術館といえるのかもしれない。
 文化庁では、国立博物館、国立美術館、国立科学博物館の違いという資料を発表している。国立博物館の目的は「文化財の保存、活用」、国立美術館は「芸術文化の創造と発展」、国立科学博物館は「自然科学及び社会教育の振興」とのことだ。

 

 コレクションや展示についても違いが見られた。国立博物館のコレクションは日本の文化財となっている。例としては、襖絵や仏像、考古資料などが挙げられることから、国内で発掘、保存されたものを収集しているということになるだろう。これらを展示するときには、適切な保存管理が前提だ。
 国立美術館の場合は、「我が国の近・現代美術及び海外の美術作品等」であり、国内のアートだけにとどまらない。さらに、絵画だけでなく写真なども含まれているという。展示する際は保存管理ももちろん重要だろうが、「感性を刺激する様々な工夫」とあるので、鑑賞者が楽しめる工夫を凝らした展示が特徴といえそうだ。
 国立科学博物館の場合は、標本化の過程を経て資料としての価値を有する「自然史及び科学技術史に関する資料」とのこと。これらを総合すると、博物館は文化や歴史的なもの、美術館は芸術的なもの、科学博物館は自然・科学技術的なものを収集・展示しているといえそうだ。

 雑誌『一個人』3月号では、「日本の美術館が10倍楽しくなる話。」という特集を展開している。美術鑑賞のポイントなど、博物館での鑑賞時にも役立ちそうな雑学なども掲載。実際に美術館と博物館、両方に足を運んで違いを確認するのもおすすめだ。