スーパーコンピューター開発を手掛けるベンチャー企業をめぐる国の助成金不正受給事件をはじめ、新たな疑惑が噴出する安倍政権。なかでも「もり・かけ」問題は相変わらず不透明なままだ。現状をどう見るべきか。安倍政権の描く未来図とは何かーー早々重版が決まるなど話題を呼ぶ新刊、元経産省官僚・古賀茂明氏と記者・望月衣塑子氏の『国難を呼ぶ男! 安倍晋三 THE 独裁者』から紹介する。

■役人の忖度は常に違法スレスレ

撮影/佐々木芳郎

望月 森友問題で「忖度」という言葉が話題になりました。籠池さんが外国特派員協会で会見を行った際、通訳が「忖度」という言葉をなかなかうまく訳せずに困ったという話がありました。日本人社会では心に思ったことを口に出さず、相手のことをそっと思いやるのを美風とする傾向があります。

古賀 確かに忖度は、日本の組織独特の慣行で、外国人には理解しづらいかもしれません。私は長く経済産業省の官僚として役人の忖度発動のメカニズムを直接見聞きしてきました。その立場から見ると、現在のマスコミでの「忖度」という言葉の定義が曖昧な感じがします。いろいろな意味で使われているような。

望月 何種類かのパターンがあるということですか?

古賀 忖度の定義は難しいのですが、官僚文化のなかでの「忖度」には、一般的な意味より少し「色」がついている。これは、日本の「組織」に共通していることかもしれませんが、忖度の対象となる人の内心が、「外には言えない」ということが前提になっているのです。

望月 具体的には?

古賀 たとえば、企業において利益を追求することは当然のことであり、社長が利益を求めていることは、様々な形で外形的に明らかです。このような場合、社員が、社長の指示がないまま、利益追求のために行動しても、それは「社長の意向を忖度した」とは言わない。

望月 なるほど、確かに、そんなふうには言いませんね。

古賀 役所で忖度という言葉が使われるときには、その対象となる人が、「おもて向きには言えないが、こういうことを考えているはずだ」と読み取ることがカギになる。そして、「表向きには言えないこと」とは、違法なこと、本来やってはいけないこと、考えてはいけないことです。法律の執行を上司の指示なく行っても、それは忖度とは言いません。それに対して、違法なことを「上司はそれを望んでいるだろうと推し量って行うこと」は忖度。つまり役所でいう「忖度」は、常に違法スレスレの問題を孕んでいるのです。また忖度の対象者は、自分の上司や、自分の出世に将来も含めて影響力を持つ人です。役人だけでなく、上司に影響力を持つ政治家や業界関係者なども含まれます。

 森友の一件においては、これは昭恵夫人が望んでいるだろう、安倍首相も当然、望んでいるだろうと推し推し量ったことが事件につながりました。国会答弁がすべて嘘だったことがばれた佐川 宣寿(さがわ のぶひさ)・前理財局長、直属の上司だった迫田 英典(さこた ひでのり)・前国税庁長官(森友学園事件当時の理財局長)などに忖度しつつ、同時に安倍首相にも忖度したわけですよね。