《財界のケツを舐めて密かに移民導入を進める政権。 グローバリズムによる社会の疲弊を推進する政権。 それが「保守政権」を名乗る「美しい日本」ぶり。 本書で日本は終わっていることに納得した僕は、 仲間と家族を大切にして子孫に託することにした》 社会学者・宮台真司氏が絶賛する 新刊『問題は右でも左でもなく下である』を上梓した 適菜収氏。一方、社会の裏側や時代の本質を暴いてきた評論家・ 副島隆彦氏。ふたりの初対談が実現した。 「なぜ日本はここまで堕ちてしまったのか?」 「知の崩壊に抗う術はあるのか?」 白熱の対談内容を公開。

■奴隷をやめて反逆せよ

 

適菜 『ニーチェに学ぶ 奴隷をやめて反逆せよ!』(成甲書房)を送っていただいて、面白く読ませていただきました。私の名前が20ヵ所くらい出てきて驚きましたが。副島さんいつ頃からニーチェを読みはじめたのでしょうか?

副島 10代ですね。この人は何を言っているのだろうと疑問に思いながら読んでいました。雰囲気はわかるけど、何を言ってるのかわからない。20代30代の頃は、あまり近づいてはいけない人だと思っていた。それで、哲学の内容よりも、外縁部からニーチェの人間像に近づこうと思って、断片的には読んでいました。適菜さんの著作により、全体の雰囲気がようやく捉えられるようになったという感じです。

適菜 この本に重要な指摘が2つあって、ニーチェは「楽しい世の中」を作りたかったというのが1点、それとニーチェを保守主義の文脈で読まないと理解できないというのが2点目。これは私が指摘してきたこととほとんど同じですが、副島さんはどのような経緯でその認識に辿り着いたんですか?

副島 大きな2点というのは、あなたが言われた通りで、それは私の人生遍歴そのものなんですよ。私は極左と保守の間で、複雑骨折してきた人間だから。

適菜 保守主義は基本的に近代啓蒙思想や近代の理性に対する反発ですが、ニーチェのキリスト教批判も、プラトンの不健全な概念がキリスト教を経由して、近代啓蒙思想に流れ込んでいるという指摘ですよね。それが近代社会の原動力になっている。だから、より人間的なものを肯定して生きるということを考えるときに、やはり保守主義の文脈でニーチェを読まないと頓珍漢な議論になってしまう。

副島 ニーチェがなかなか理解されないのも、ドイツ文学科、ドイツ哲学科を出たような学者が国民をバカにしているからですよ。ニーチェの理解など、一般人にはこの程度でいいのだと。日本の知識人は、江戸時代には漢詩、漢文を読んで、中国人になりたがった。それが幕末から急激に洋学になってしまう。ニーチェが死んだのは1900年、福沢諭吉は1901年です。私は最近は横に大きな幅で物をみて、共時性を考える。同じ時代に発生した出来事は、なんらかの影響関係があると。

適菜 ニーチェも自分が生きた時代について書くことで、歴史全体に迫っていきますね。ワーグナーを批判したのも、ワーグナーが背負ったチープな愛国主義に対する反発のようなものがあった。

副島 じゃがいもと豚肉とハムしかなかった国なのに、あの頃は、急激にけばけばしくなったんですよ。ヘーゲルたちがベルリン大学を作って意気揚々とやってる19世紀前半と違って、後半になると「イギリス人やフランス人に負けないぞ」という感覚になってくる。勃興する階級のいやらしさが本当に凄かったんじゃないですか。プロイセンは普仏戦争で勝って、フランスを叩きのめした。それで貨幣が強くなった。

適菜 ここのところ『安倍でもわかる政治思想入門』『安倍でもわかる保守思想入門』『安倍政権とは何だったのか』(以上、KKベストセラーズ)といったような政治家批判、大衆社会批判の本を何冊か出したのですが、これもニーチェがワーグナーを批判したときに指摘したように、ある特定の人物を通して、時代の精神、時代の病のようなものが見えてくるからですね。

副島 読みました。面白かったです。

適菜 政治思想史や保守主義の文脈できちんと見れば、安倍は巷で勘違いされているような「保守」でも「右翼」でも「復古主義者」でもなく、きわめて戦後民主主義的というか、花畑のグローバリストというか、大衆社会が腐り果てた結果に過ぎないのではないかと思います。副島さんは安倍をどのように考えていらっしゃいますか?

副島 「のうたりん」と呼んでいます。先日安倍晋三応援団みたいな経営者たちの前で、「あの知恵遅れが」と言ったら、みんな目が三角になっちゃって、うるさいなと思ったんです。きっと安倍の世話になっているのでしょうが。

適菜 私も日本の支配層みたいなのが集まるところで講演をやり、安倍の悪口を言ったら、お呼びがかからなくなりました。

副島 私は日経ホールを貸してもらえないの。高額の使用料を払うと言っても、正式にお断りにくるんです。あそこは経団連と野村證券と日経新聞、農協、あの辺がつながっているので。

適菜 安倍政権の一番の問題はどのあたりにあると?

副島 あなたが書いておられた通りですよ。なんでも言いくるめて、嘘八百を平気で言う。自分が首相として生き延びればいいと。安倍一派の中でも、それに反発したのが籠池や京都大学の中西輝政。憲法改正をなぜ早くやらないのかと。それで日本会議の内部でもケンカになった。私と籠池は同じ歳だし、似ている部分がある。話し方もインテリだし、活動家なんですよ。まあ、私は籠池も中西も嫌いですが。安倍は狂気の人間だけど、やはり政治家だった。トランプに貢物をして、ベタっとすり寄っていったわけです。恐ろしいほどのプラグマティストというか、嫌な奴です。岸信介以来の統一教会ですし。