時代を超えて、国境を越えて、人々を魅了し続ける名画。展覧会はそんな珠玉の作品がずらりと並ぶ貴重な催し物。しかし、開催されるまでには裏方たちの地道な活動の労苦があった――。
知られざる展覧会の舞台裏とは? コラム「美術館の“裏側”公開ツアー」、今回は日本美術篇(雑誌『一個人』2018年3月号より)。

大型回顧展開催までの流れ

1.企画立案
 美術館と共催者との間で取り上げたい作家などの意見を交わすところからスタートする。準備期間はそれぞれだが、鶴見さんの担当展での最長は6年、最短では1年半。

2.所蔵先調査
 目当ての作品が現在、どこ(誰)に所蔵されているかを数カ月にわたって調査し、展覧会出品候補をリストアップ。明治期、大正期などの画集も手掛かりになる。

3.出品交渉と作品調査
 個人所蔵家に訪問して出品の交渉を始める。交渉はタフな作業で粘り強く進めることも多いが、実際にこれまで所在がわからなかった作品を調査できる絶好の機会でもある。

4.印刷物・広報対応
 出品作品や展覧会の筋立てが決まると、コンセプトに従ってポスターやチラシ作成と広報活動を行う。図録掲載用に所蔵先から作品写真を集めるのも仕事のひとつ。

5.展示プラン・図録作り
 展覧会図録の執筆と編集が始まる。図録用の写真撮影や翻訳を手配する。また、並行して展示プランをイメージして研究員自ら図面に起こし、施工業者を手配する。

6.作品集荷
 美術品専門業者と専用トラックで集荷。研究員は必ずトラックに同乗して借用先に向かう。またその際、シミ、シワ等のチェックも入念に行う。

7.展示
 あらかじめ作った展示プランに従って会場の施工が終わると、実際に作品の展示作業が始まる。美術専門の作業員や施工業者と会場を作り上げる。

8.展覧会開催
 開催中「展示替」もある。「展覧会前期のみ」など出品条件付きの作品を差し替える。展示替はリピーターを見込んだ演出と誤解されるが実情は異なる。

9.講演会・VIP対応・パッケージツアーなど
 教育普及、広報活動の一環として関連の講演会で講師を務め、旅行会社が企画したツアー客にレクチャーするほか、皇室などVIPが来場の際は解説を行う。

10.展覧会終了後、作品返却
 集荷と同様に、トラックに研究員が同乗して返却先へ。巡回する場合は次の会場で担当者に引き継ぐ。返却が終わると、報告書を作成してようやく終了。

 
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