漫画がきっかけで文学のファンに

 雑誌『一個人』4月号の大特集は、「文士と画家が愛した宿」。作品が誕生した宿のほか、文豪たちが愛した名店も紹介している。そのなかで、昭和初期の文壇を語るうえで欠かせないバーを紹介した。その名は「ルパン」。永井荷風や直木三十五、織田作之助、坂口安吾、太宰治など、そうそうたる顔ぶれが 常連として名を連ねている。
 文壇バーともいわれる同店には、こうした歴史を知る文学ファンが集まり、海外から訪れる客も少なくない。とくに太宰は、現在も若い世代から人気を集めているというのだ。

 太宰はその作風のみならず、生き様やビジュアルなどの要素は人をひきつけるものがあり、熱狂的なファンに支持されている。近年では、お笑い芸人の又吉直樹が芥川賞を受賞したとき、彼が尊敬してやまない太宰治が欲しがった賞を受賞したとして話題になったこともある。
 しかし、若者の文学離れが叫ばれているという現実もあり、“聖地巡礼”として多くの若者が同店を訪れるのはなぜか考えてしまった。

 もちろん、純粋な文学ファンもいるわけだが、マスターの開 幾夫さんによれば、現代の作品の舞台にもなっているからではないか、とのことだった。それは異能アクションバトル漫画『文豪ストレイドッグス』(原作:朝霧カフカ、作画:春河35/KADOKAWA)のことで、小説やテレビアニメにもなっている。

 

 この作品には、危険な依頼を請け負う「武装探偵社」という架空の組織が登場し、文豪たちをモデルにしたキャラクターが特殊能力を駆使して仕事をこなす。小説版のカラーページには、太宰治らがルパンにいるイラストが描かれている。泉鏡花が女性キャラクターになるなど、現実との相違はあるが、太宰が自殺マニアなど、現実の設定を生かしたところも若者を中心に人気を集めているという。
 この作品をきっかけに、太宰治の小説を読んでみる、そして、“本物”の太宰のファンにもなっていく、というのだ。こうした現象は戦国武将をモデルにしたゲームにも見られ、文学や歴史にふれるきっかけはひとつではないということを改めて実感した。

 文豪が愛した店を訪れることも、文学の扉を開けるきっかけとなるだろう。教科書にも登場するあの有名作家が愛した料理とは? 詳細は『一個人』本誌をチェックしてほしい。