東京ユナイテッドで現役としてコーチとしてピッチに立ちながら、サッカーを書き、伝え続けた岩政大樹。それは本連載の副題「サッカーの常識への挑戦」だったであろう。やり続け、賛否も受け見えてきた「サッカーに必要な言葉力」について。

岩政大樹「現役目線」第34回

■言葉には区別がない

 島で育った小さい頃、毎年のように学校でつくる文集みたいなものがあり、子どもたちの自己紹介を載せるページがありました。その中にこんな項目がありました。

「好きなタイプ」

 ほとんどの女子の答えが「やさしい人」と書かれているのを見て、いつも疑問に思っていました。

「”やさしさ”って何?」

 当時は今よりずいぶん血気盛んなガキ大将だった僕は、「そりゃやさしい人には見えないだろうけど、おれにだってやさしさはあるぞ。そもそも何でも『いいよ』って言って受け入れてあげることがやさしさなのか?」

 小さな少年のくだらないたわごとですが、そんなやせ我慢を抱えながら、”言葉”のもつ不思議を初めて考えた出来事だったように思います。
 そんなことを今でも覚えている、という僕の顔に似合わないかわいい一面はさておき(笑)、言葉とは僕たちが気づかないうちに強い影響をもつことがよくあります。

 「やさしい」という言葉をつくることで区分された性格があり、それは最初は便利で分かりやすかったのだと思いますが、それが広まり「やさしい」の概念が一般化されると逆にその定義が一人歩きしていく。結局、一概に「やさしさ」といっても色々な捉え方があるので、やさしさも一つではなく、いろいろだというところに落ち着きます。

 何が言いたいかというと、言葉とはあるものを区切って分かりやすくしてくれますが、実はそこにはっきりと線引きができないものばかりなので、そこを行ったり来たりしている間には誤解も生じやすいということです。
 初めての本『PITCH LEVEL』を出版して半年が過ぎました。これまでの反響には素直に嬉しさと驚きを感じています。賛否いずれの声もありがたいものでした。