――行方不明の親友を探しに海外へ……からの大冒険! エジプトの砂漠でラクダの群れとはぐれ失神、暴れロバと小猫、黄金の鳩と番犬を引き連れ、灼熱のモロッコで行商。前代未聞の25歳(当時)の冒険家・春間豪太郎が1000km歩いた6か月の記録の一部を、『-リアルRPG譚- 行商人に憧れて、ロバとモロッコを1000km歩いた男の冒険』より紹介しよう。

■冒険の始まり

 さて、おれの冒険譚、動物たちとの日々について書く前に、まずはおれが海外や冒険に興味を持つ最初のきっかけとなった話をしよう。

 当時、おれは十九歳だった。大学では教育学を学び、音楽系専門学校の夜間部を掛け持ちしながらバンドでドラムをやっていて、居酒屋でバイトもしていた。

 毎日課題や予定に追われていて、海外に興味なんてなかった。なんとなく危険なイメージがあったから、今後海外旅行をするとしてもヨーロッパ辺りだろうと考えていた。

 そんなある週末、中学校時代からの親友であるリッキーに会うべく、おれは久しぶりに地元の京都へと帰ることにした。

 リッキーの父親はアメリカ人。リッキーも小学校まではアメリカで暮らしていたので英語がペラペラだ。当時リッキーは父親が経営しているパブを手伝っていて、そこに行けばいつでも会えた。おれは特に連絡をせずにパブへと向かう。

 パブに到着してドアを開け、中へ入るとリッキーの父親が出迎えてくれた。薄暗い店内を、円卓のろうそくの明かりがぼんやりと照らす光景は、いつ来てもなぜか満たされた気持ちになる不思議な空間だ。

「おじさん、久しぶり。リッキーは?」

 パブの上階はおじさんとリッキーの住まいになっているので、いつもならぎこちない日本語で「ウエデネテル」なんて言葉が返ってくる。だけど、この時おじさんはなぜか顔を曇らせた。

「ワカラン」

 最初、週末なので単に外に遊びに行っているだけかと思ったけど、そうではなかった。

 おじさんによると、リッキーとはもう長いこと連絡が取れないとのことだった。

「連絡が取れないって、何日くらい?」
「ロッカゲツ」

 ……なんとリッキーとは半年も連絡が取れないらしい! 立派に行方不明じゃないか!

 おじさんは毎月フィリピンにいるリッキーに生活費を送金していたが、リッキーから連絡がないので、きちんと受け取れているのかどうかは不明とのことだった。

「いや、普通に行方不明でしょそれ。警察は? どの辺りにいるのか分からないの?」
「タブン……フィリピン」

 ……外国か。よく分からないけど、日本の警察に捜索願を出してもダメそうだ。
 おれはおじさんを質問攻めにして、状況を把握することができた。

 一年前、リッキーは息抜きも兼ねて長期滞在する予定で、フィリピンに単身渡航した。

 半年ほど前、パブの常連さんがフィリピンに観光に行った際はリッキーと会えたものの、その後全く連絡が取れなくなり、音信不通になってしまったらしい。

 また、滞在許可証の期限が過ぎているらしく、不法滞在者になっている可能性が高いそうだ。当然おじさんもかなり心配していたが、当時はパブの経営が厳しかったこともあり手が離せず、フィリピンへは行くに行けない状況だったようだ。

「おじさん! そんなこと言ったって、誰かがフィリピンまで探しに行かないと、リッキーが、一人じゃどうしようもない状況になっているかもしれないじゃないか!」

 この時おれが想像したのは、リッキーがフィリピンで悪い人たちに捕まって連絡できない状態かもしれない、ということだった。そうなると探しに行って何とかなるレベルを超えている気もするけど、何もしないよりは誰かが探しに行った方がいいに決まっている。

「ソウダネ……」

 おじさんは少し考え込んでから顔をあげ、おれにとんでもない提案をしてきた。

「豪クン、ヨカッタラ、サガシニイッテクレナイ?」

 おじさんのその提案に、おれは言葉を失った。……おれが? どうやって……?

<『-リアルRPG譚- 行商人に憧れて、ロバとモロッコを1000km歩いた男の冒険』(電子版あり)より構成>