満洲事変、シナ事変と中国大陸を巡って日米両国が対立し、ついに日米戦争に発展してしまった――。こういった歴史観には致命的な欠陥がある。日米開戦を引き金を引いたのはソ連だ。江崎 道朗氏が著書『日本は誰と戦ったのか』の中で、ソ連に有利に、ソ連の敵に不利になるような目的を達成しようとする、巧妙な「積極工作」の実態を明らかにする。

■共産党員でなくても工作員に。デュープス(間抜け)に気を付けろ!

共産党志位党首と社民党吉田党首

 相手国の政策に影響を与える工作のことをソ連独自の専門用語で「積極工作」(Aktivnyye meropriyatiya, 英語ではactive measures)と言います。

『スターリンの秘密工作員』は、積極工作を、「ソ連の党と国家機構の事実上すべての要素を使う活動。それらの活動及び要素とは、外国の共産党及び国内・海外のフロント組織、文字または口頭の偽情報(特に情報の捏造)・工作員やマスコミを通じた海外メディアの操作、影響力のエージェント、( 欺瞞【ぎまん】や脅迫、威圧の要素を含むことが多い)臨機応変の政治工作などである」と定義しています。

「影響力のエージェント」とは、共産党員であるかないかにかかわらず、ソ連の積極工作の目的に協力する人のことです。

 政府高官、議員、マスメディア、学界、労働組合、フロント組織(非共産主義団体に偽装した共産党関連組織)など立場はさまざまですし、ソ連の指令を受けて作戦を行った工作員もいれば、自分が共産党に利用されている自覚がないままに結果的に協力した人もいます。

 要するに、利用できるものは何でも利用して、ソ連に有利に、ソ連の敵に不利になるような目的を達成しようとしたのが積極工作なのです。

 この「影響力のエージェント」について、アメリカのエドガー・フーヴァーFBI長官は、次のような五種類が存在すると指摘しています。

一、公然の党員 
二、非公然の党員
三、フェロー・トラベラーズ(同伴者)
四、オポチュニスト(機会主義者)
五、デュープス(間抜け)

 

 公然の党員とは、共産党に所属していることを世間に公にして活動している者を指します。今の日本で言えば、共産党委員長の志位和夫氏や共産党から立候補した政治家などです。

 非公然の党員とは、共産主義を信奉していることや共産党に所属していることを隠し、公然の党員とも接触せず、共産党の秘密活動に従事する党員のことです。

戦後釈放された日本共産党党幹部

 フェロー・トラベラーズは、共産党に所属してはいないが自発的に共産党を支援する人、オポチュニストは利益が目的で一時的に共産党に協力する人、そして、デュープスは、共産党やその関連組織の宣伝(「平和を守れ」、「弱者を救え」など)に情緒的に共感して、知らず知らずのうちに共産党に利用される人を意味します。

 このようにソ連、共産党は、自分がソ連、共産党に利用されている自覚がないままに結果的に協力している人を作る宣伝工作に長けていたのです。言い換えれば、ソ連、共産党の主張に賛同していたからと言って、共産党員であるとは限らないのです。この点は、ソ連、共産党の積極工作を考える上で極めて重要な視点ですので、留意しておいてください。

(『日本は誰と戦ったのか』より構成)