日本全国に数多ある名字に高校生の時から興味を持ち、研究を始めた高信幸男さん。自身が全国を行脚し出会ってきた珍名とそれにまつわるエピソードを紹介する。

 3月は巣立ちの季節。多くの学生が、それぞれの学校を卒業し、高校・大学に進学する者、社会人となって働く者と様々で、新たな巣立ちがある。
 ところで、この時期は卒業シーズンとともに、4月にかけて入学シーズンでもあるので、今回は学校に関係のある名字を紹介したい。

 まず、入学(にゅうがく)という名字が大分県にある。受験には、とても縁起の良い名字であるが、入学さんにとってはつらい時期でもある。実は、入学さんのエピソードとして、受験シーズンになると、なぜか表札が盗まれるそうである。「入学」の縁起の良い表札をお守りにするのではと話していたが、受験生のためと思い、特に警察には届けていないそうだ。「入学」以外の学校関係の名字では、先生(せんじょう)・大学(だいがく)・黒板(くろいた)・机(つくえ)・墨(すみ)・硯(すずり)・筆(ふで)・紙(かみ)・唄(うた)・笛(ふえ)・太鼓(たいこ)・講堂(こうどう)・食堂(しょくどう)・庭(にわ)・走(はしり)・知識(ちしき)等がある。学校といっても名字が作られた明治の初めの頃なので、現代の鉛筆や消しゴム等はもちろん無く、日本古来の書道や雅楽が授業科目の頃に生まれた名字なのである。

 

 先生(せんじょう)さんのエピソードとしては、小学校の時に、教育実習に来た先生が、教室に入り座席表を見るなり「この学校って変わっていますね」と言ったことがあったのだという。「え、この先生何言っているの?」と思ったそうで、先生が先生(せんじょう)と言う名字を知らず、座席表の窓側の一番後ろに「先生」と書いてあったことから、先生は一番後ろに座るものと勘違いしたようである。生徒が「先生、それ名字です」と言って、初めて先生の席ではないことを知ったそうだ。

雑誌『一個人』2018年4月号より構成〉