「長時間労働の是正」「生産性アップ」などがメディアで取りざたされるなか、教育学者・齋藤孝氏はこれからのビジネスシーンに必要なのは「手抜き力」である、と説く。齋藤孝著『できる大人の「手抜き力」』よりその極意を紹介する。

■仕事のムダを生みやすい2大NGワード

念のため、一応、揃えた資料の多くは使わない

 近年、労働時間を短縮してプライベートの時間を充実させよう。あるいは、業務を効率化して生産性を上げよう、といった声があちこちから発せられるようになってきている。そんないま、ビジネスパーソンが身につけるべきスキルは何か。

 それは「手抜き力」である、と提言するのは教育学者の齋藤孝氏だ。

 大学の授業、メディア出演、著作の執筆、全国での講演など、齋藤氏がこれだけ多くの仕事を回せるのは、いらないムダを徹底的に省く力=手抜き力があるからだという。

 手抜きというのはネガティブな意味を持っているが「手抜き力」となるとニュアンスは変わる。

「『力』という言葉を付け加えることで、抜くべきムダ、抜いていい手間なら、徹底的に抜ききろう、という前向きな行動を意味する言葉に変わるんです」。

 いかに手間を省くか、という発想から仕事に入るから時間の浪費を防げるのだという。他方で「万が一」に備えて準備を入念におこなう人もいる。

「万が一を気にしすぎることが、不安や心配性、取り越し苦労を生み、それが仕事を遅くし、ストレスの元凶にもなっていきます」

 

 もちろん「万が一」を想定して行わなければならない仕事もある。しかし、社内の会議や資料作りなど、人の生死に影響のないような仕事では効率を最優先するのがいい、と齋藤氏は言う。

 では「手抜き力」は具体的にどのように発揮すればいいのか。

 まず取り組んでみたいのは、「念のため」と「一応」をやめてみること。

「仕事をする上でも、誰もが日常的によく使っている言葉だと思います。万が一のケースを見据えたリスクマネジメント的発想から出てくる言葉ですが、この『念のため』『一応』こそ、ムダな時間やムダな手間を生み出す、手抜き力の大敵なのです」。

「念のため、もう1回集まりましょうか」→本当に話し合うべき議題があるときだけ集まる。

「一応、資料を作っておこうか」→実際に使う資料だけ用意する。あるいは用意した資料を使い切る会議にする。

 先回りして考えられるのは一見「できる人」のようだが、見方を変えればゴールが見えていない人ともいえる。「念のためこれも、一応あれも」という発想をやめることが仕事効率と作業効率のアップにつながっていくのだ。

 よかれと思ってやっていたことが「いらないムダ」になっていることはないだろうか。「手抜き力」の極意を知れば、自分だけでなく周囲のみんながラクになることを実感できるはずだ。