「長時間労働の是正」「生産性アップ」などがメディアで取りざたされるなか、教育学者・齋藤孝氏はこれからのビジネスシーンに必要なのは「手抜き力」である、と説く。齋藤孝著著『できる大人の「手抜き力」』よりその極意を紹介する。

■ゴールから逆算して最短コースで仕事せよ

「人間にとって時間は何よりも貴重なものです。ムダな拘束というのは、相手に『懲役』を課しているに等しいと認識すべきです」(齋藤孝さん)

目的やゴールの見えない会議は苦役でしかない

 本当に仕事ができる人は、自分の仕事を早く終わらせるだけではない。仕事相手にもラクをさせるものである。

 齋藤氏がテレビ番組『有吉反省会』に出演したとき、とにかく撮影時間が驚異的に短いことに驚いたそうだ。30分番組なのに40分くらいで収録が終わってしまったという。

「そのいちばんの理由が、有吉さんのコメント能力と番組進行能力の高さにあることは間違いのないところです。しかしその陰で、収録の段取りのよさ、ムダのない時間配分といった番組スタッフの貢献度も非常に高いと私は考えています」

「いい番組」=「丁寧につくりこんだ番組」ではない。テレビのロケにかかる時間は、はそれにかかわる全員が同じ分量だけ供出している「みんなの資産」だ。だからこそ、正しい手抜き(=手間抜き)をして、ムダなく大事に使うという意識が重要だ。

 

 逆説的だが、そのためには時には相手によって手の抜き方を変えることも必要になる。

 例えば、ビジネスライクな関係が嫌いな人と仕事するとき。「まずは一杯飲んで」といったような「飲みュニケーション」重視派だ。

「そういうタイプとは、ムダとか時間の省略とか考えずに、はじめに濃く付き合ってしまったほうが、打ち解けるまでの時間も早く、結果として仕事効率が高い」というのが齋藤氏の持論。

 大学に勤め始めた頃、最初の1年は誘われるままに飲みに行った。すると、そのおかげで他の教員のほとんどと打ち解けた関係が構築できて、いまでも非常に仕事がしやすいという。

 あるいは細かい人を相手にする場合。すべてをチェックしないと気がすまない、書類はきれいに整えないと落ち着かない、そんな「手抜き力」のある人と対極のタイプだ。

 こういうケースでは、「あなたは細かい部分の担当、私は大筋を動かす担当」と、チーム内での役割分担をハッキリさせておく意識が大事。

「仕事のやり方やその人の持ち味によって役割分担をすることで、一方は手抜き力のスキルを発揮してテキパキと仕事ができ、もう一方も持ち味であるじっくりこだわる仕事ができるのです」

 いずれの場合も大事なのは、ゴールについて明確なビジョンを持ち、そこから逆算して段取りを組むこと。ゴールから逆算するからこそ、必要と不要が見極められる。これも「手抜き力」の要諦である。