文豪が味や店に惚れ込み、足しげく通った老舗が現存する。当時と変わらぬ料理を堪能することで、作家が身近に感じられるのではないだろうか。
今回取り上げるのは、太宰治が通った「ルパン」。

太宰治が素顔を見せた場所は現代もファンの聖地に

左から、織田作之助、坂口安吾、太宰治(撮影:林忠彦)。

 太宰治がバーで酔っ払った姿が写真として残されている。これが撮られたのは、昭和3年(1928)創業の「ルパン」だ。撮影したのは、写真家の林忠彦氏。「売れっ子の織田作之助を撮っていたところ、太宰にもせがまれて仕方なく撮影したようです」と、現在のマスターである開幾夫さんが裏話を教えてくれた。
 太宰は奥のカウンター席を好み、そこで酒をたしなんだ。現在では“太宰席”といわれることもあり、ファンが順番待ちをしてまで座りたがるほどの人気ぶりだ。
「カウンターテーブルや椅子は戦前から使用しています。創業時のドアはトイレに利用。当時の雰囲気を味わっていただけるのでは」。 

怪盗ルパンが描かれた看板が路地裏に灯る。

 そんな昭和レトロな空間でいただくのは、オールドパーやホワイトホースなどのウイスキー。太宰が何を飲んでいたかは定かではないが、当時から飲まれていた酒をファンに提供している。

雑誌『一個人』2018年4月号より構成〉