【実話】冒険家の春間豪太郎は、ロバとモロッコを徒歩で横断するという冒険を果たすべく、モロッコのティネリールという町にある動物市場に到着する。前代未聞の、当時25歳の冒険家が1000km歩いた6か月の記録の一部を、『-リアルRPG譚- 行商人に憧れて、ロバとモロッコを1000km歩いた男の冒険』より紹介しよう。
 

 ■まずはロバ選びだ!

 さて、候補となる五頭のうち、一頭目のロバは若く、かなり大きかった。ティズギ村で飼われているロバで、飼い主の提示価格は約二万三千円。普段はおとなしいが、とても臆病かつ攻撃的なようで、棒を見せるとそれだけで暴れ出す。右耳が欠けていて、よく見ると全身に傷があり、鼻にも目立つ傷があった。もしかしたら、人間にひどいことをされたトラウマで、攻撃的になっているのかもしれない。

 二頭目のロバも体は大きめだった。ティネリールで飼われているロバで、飼い主の提示価格は約二万円。ただし、こちらが遠くにいる時ですら、必死に逃げ出そうと暴れていたため、かなり気性の荒いロバのようだ。

 同じくティネリールで飼われている三頭目のロバは小柄だった(約一万二千円)。かなりおとなしく、初対面の人間が乗った場合でも従順だ。ただし、脚から少し血が出ていて、長距離を歩いた際に問題が起きないか少し不安だ。

 四頭目のティズギ村のロバは三頭目よりは大きいが小柄だった(約一万二千円)。おとなしく、人が乗っても全く嫌がらない。馬力も十分だ。さらにこのロバには「ブライト」という名前が付いていた。モロッコではロバは道具として扱われるため、名前を付ける習慣はない。道具なので、日本でいうペットのような扱いはしないからだ。このロバは飼い主から深く愛されているようだ。

 同じくティズギ村にいた五頭目のロバは、一頭目のロバほどではないが、かなり大きかった(約二万六千円)。おとなしくて馬力のあるロバだ。ただし、歩き方がほんの少し不自然だったので、もしかすると長距離を歩くことができないかもしれない。

 以上、五頭の中から相棒となるロバを選び出さなければならない。ちなみに二頭目のロバ以外は実際に乗って動かしてみたが、少なくとも短距離であれば、皆おれの指示に従ってくれた。動物を扱うのにはある種の才能や経験が必要らしく、普通外国人は皆ロバを全く動かせないはずだと、多くの現地人が驚いていた。ラクダの遊牧経験があるおかげだろうか。なんにせよ現時点で、おれには動物を扱うことに対する適性があるらしい。

 どのロバにしようか。まず、二頭目は除外だ。近くに人がいないにもかかわらず暴れるようでは、すぐに何かしらの問題を起こすに違いない。万が一車を蹴けられでもしたら弁償しなければならないので、即冒険を中止しなければいけなくなるだろう。飼われている場所もティネリールなので、その点も都合が悪い。

 三頭目と五頭目も避けるべきだろう。脚を怪我していたり、歩き方がおかしかったりすると、後々大きな問題になる可能性がある。長期間、長距離の冒険に耐えられるような、安心できる相棒が望ましいだろう。