■絶句し、つぶやいた「冗談だろ……」

 

 大谷翔平が止まらない。
 アスレチックス戦に8番DHで先発出場すると、2回の第一打席にセンターへ3試合連続となるホームランを放った。2回までで0対6と大差をつけられていたエンゼルスにとって大谷の一打が起爆剤となり、その後チームは13対9で大逆転勝利を収めている。
 打った瞬間それとわかる打球。現地の実況は「Wow」とひと言口にすると絶句したように無言となり、解説は「Are you kidding me?(冗談だろ…)」とつぶやいた。

 冷静だったのは大谷翔平だけだったのかもしれない。
 そのダイヤモンドを回る大谷の姿を見てふと思い出した。

 2016年、「1番ピッチャー」で出場、初球を先頭打者ホームラン……。あのとき、大谷はゆっくりとダイヤモンドを一周した。それは次の回(イニング)の登板を見据えて体力を温存していたからだという。

 

 もうひとつ、クライマックスシリーズファイナルステージ第5戦。日本でも伝説となった165キロを出した試合。吉村へ投じた1球目が日本最速となったその球を、大谷はベンチへと放り投げた(この記憶は正しいのだろうか。さまざまな映像を観たが確認できなかった)。筆者は「記念ボール」を保存するために大谷がそうした、と思い驚嘆したのだ。「こんな大事な場面で、なんて冷静なんだ……」と。あとで思えば、ベンチからの指示だったかもしれないし、そもそもボールがキャッチャー・市川友也のミットからこぼれていたから、単なるボール交換だったのかもしれないのだが。

 あるとき、栗山監督にこのとき感じたことを話した。

――あの場面でこれだけ冷静なのは……考えられないです。

 栗山監督は真顔で言った。
「ああいう男なんですよ、翔平は。心がある」

 そうか。冷静というのは「心がある」に置き換えられるのかもしれないと思った。
 ちなみに165キロの記念ボールは、大谷翔平から栗山監督へ手渡され、球団の金庫にしまってあるという。
 日本時間で9日、アスレチックス戦に投手として先発する予定だ。